第48話 秘めた力

ダッ


空を駆ける。


フリズスキャルヴを行使。

情報が凄い速度で流れ・・・アスモデウスの居る場所を特定。

そちらに向かって駆ける。

とりあえず頭懲らしめれば何とかなるだろう。

あの巨大な神殿か・・・中にはたくさんの芸術品。


「何者だ、何処に行く!」


悪魔達にまわりこまれる。

やはり空中だと目立つか。


「我は御神の神意を執行する者也。道を空けよ」


なるべく低く、抑揚の無い声を出す。


「人間かと思ったら、神の眷属かぁ?手加減はせんぞ?」


言いつつ、その動作は戦闘のそれではない。

フリズスキャルヴを行使するまでも無く分かる。

こいつ等は、強い。


悪魔は目にも止まらぬ速度で回り込むと、


ガッ


俺の首筋に手刀を入れる。

意識を刈り取ろうとしたのだろう。


「痛?!」


悪魔が叫ぶ。


「抵抗を確認。排除を実行する」


俺が低く告げ、グングニルを召喚。

空に向かって投擲する。


「ん?何処に向かっ・・・」


ザクゥッ


手刀を入れた悪魔が足を貫かれ、そのまま地面に落下。


ドウッ


地面に縫い付けられる。


「う・・・動けねえ?!」


ようやく事態を把握した他の悪魔が、攻撃態勢を取る。

力量差があるからの余裕、力量差があるからの手加減。

余裕がなければ、殺す気で来る。

それは当然だ。


「散開、フォーメーションアルファ!」


悪魔が散開。

ある者は一撃離脱、ある者は超遠距離射撃、ある者は足止め、ある者は弾幕、ある者は大技を準備・・・


「妨害を確認。進路を確保する」


そう告げ、グングニルを投擲。


ひょい


ざくざくぅ


どすどすん


全員行動不能にする。


「く・・・何者だ・・・悪魔・・・め・・・」


悪魔はお前等だからな?


「汝等の処分は、後日通達する」


そう告げると、高度を落とし、疾走を再開した。

・・・疲れてきたな・・・

月夜の庭園を追加行使。

走ったら疲れが回復する様に、法則を改変する。


「止まれ!」


あれは・・・ヴェルローズとウルフ、エイダにベティーナ・・・その他、強い力の持ち主達。

悪魔には協力していないと思っていたが、悪魔の居城を守る仕事に就いていたか。

まあ、無謀な挑戦を止める意図もあるのだろう。

顔を隠してはいるが、ばれても困る。

それにしても、正体隠蔽系スキルがないんだよなあ・・・


ひょい


グングニルを投擲。


ぐさぐさあっ


全員地面に縫い付ける。


たったったっ


頭上を駆けて通り過ぎる。


「貴様、何者だ・・・」


ヴェルローズが力無く呻いた。


闇夜を駆ける。

それにしても、グングニルは便利だ。

使ったら殺してしまう三日月の弓は使えない。


〈ぴろん。三日月の弓の秘めた力が解放されました〉


ん?

アルテミスの声がする。

システムメッセージの真似だろうか。

効果音らしき物も自分の口で言っている。


三日月の弓

 特殊

  ・矢を射ると、刺さる。

  ・対象が複数の場合、

   全て刺さる。

  ・刺さった者に、

   行動不能、または、死を付与する。


あ、行動不能付与出来るようになった。

でも、もうグングニル使い慣れたし、両手いるし、積極的に使う意味は。


〈ピロリロリロリン!三日月の弓の秘めた力が解放されました〉


効果音が電子音、その後のメッセージが合成音声っぽく!

こだわるなあ。


三日月の弓

 特殊

  ・矢を射ると、刺さる。

  ・対象が複数の場合、

   全て刺さる。

  ・刺さった者に、

   任意の状態異常を付与できる。


あ、これは便利そうだ。

使ってみよう。


〈アルテミスよ、途中で能力を変更するのはフェアではないと思うのだがね?〉


オーディンがアルテミスに抗議する。


〈弓の熟練度が上がって、真の力が解放されただけよ?〉


弓使ってないけどな。


〈く・・・だが、使い勝手はグングニルの方が良いからな〉


オーディンが呻く。

とりあえず、せっかく変わったし使ってみよう。

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