第33話 綺麗な女
「多分ここね」
目撃情報が集中している辺りで、エイプリルがサーチの魔法を行使。
古びた廃教会の前で止まる。
「よし、行くぞ」
ウルフが先陣をきって乗り込む・・・が、中には誰も居ない。
「外れかあ?」
ウルフが唸ると、エイプリルが否定する。
「恐らく地下が有るわ?」
エイプリルは目を閉じ・・・ややあって、目を開け、
「そこの像の下あたり、怪しいわ」
女神像を指さす。
ジリアンが調べ・・・
「確かに動かしたような跡があるね」
女神像を動かすと・・・階段が現れた。
「ち・・・隠れて何やってやがる」
ウルフが前に進み出て、階段を率先して降りる。
次に俺、リパーとエイプリル、最後尾にジリアン。
地下に広い空間が有り、そこにたくさんの人が自堕落な様子でくつろいでいた。
「・・・お前達、誰だ!」
そのうちの一人の男がこちらに気づき、向かってくる。
捜索願が出ている人物だ。
「お前達を迎えに来た」
ウルフが進み出る。
「・・・なっ・・・ウルフさん?!」
男が驚いて下がる。
「薬をやるのは別に構わないが、こんな所に隠れてやるこたあないだろう?お前等何で黙って消えた。この集まりは何なんだ?」
「・・・どうしようが俺達の勝手だろ!ここは楽園なんだ!」
最初こそウルフに驚いたものの、持ち直し、開き直る男。
後ろの人達も、警戒の目を向けている。
「・・・魔力の流れがおかしいわ?」
エイプリルがぽそっと言う。
「どう言うことだ、嬢ちゃん?」
ウルフがエイプリルを見て言う。
「ただの薬じゃ無さそうね。押収して調べてみたいわ?」
「おう、分かった」
ウルフが進み出る。
「く・・・来るな!」
男が叫ぶ。
「困ります!」
女が進み出て、ウルフを止めようとする。
「その女性も、何かおかしいわ?人・・・じゃない?」
「・・・確かに違和感を感じるな。お前、何者だ」
女はきょとん、とすると、
「・・・まさか、ばれるとは思いませんでした」
怯えた表情が消え、にっこりと微笑む。
かなりの美女だが・・・
「綺麗な外見だが・・・手加減はしねえぞ?大人しく洗いざらい吐け」
ウルフが女に向けて一歩踏み出し・・・
つん
いつの間にか女はウルフの目の前に移動。
額を指で押さえ、
「ここは放棄しますね。ウルフさん、貴方とは近いうちに会うことになると思いますが・・・今は見逃してあげます」
がく
ウルフが膝をつく。
震えている・・・?
「ほらみなさん、薬、は回収しますわよー」
奥に居た人々が持っていた何かが、光の泡となって消えていく。
「それでは」
女はそう言うと、光の泡となって消えた。
重苦しい空気がなくなり、俺は膝をついた。
動けなかった・・・
他のみんなも同じようだ。
圧倒的な殺気・・・?
悪寒・・・?
動かないことを魂に命じられているような重苦しさだった。
「何・・・あれ・・・強いわね」
エイプリルが呻く。
「ウルフさんが一歩も動けないなんて・・・」
ジリアンも驚いて言う。
「く・・・お前達・・・情けない所を見せたな」
ようやく動けるようになったのか、ウルフが立ち上がる。
・・・ランク4のウルフでも駄目なら・・・あいつは一体どんなランクなのか。
そもそも人じゃ無い・・・?
神?
エイプリルがつかつか、と奥に行くと、一人の男性の前に行き、
「貴方、何らかの方法でさっきの薬持ってるわよね、渡して欲しいわ?」
「な・・・貴様・・・何者か知らんが、何の事だ」
「渡さないと、ウルフさんけしかけるわよ?」
「・・・くそ・・・」
男が瓶に入った薬を虚空から取り出す。
「少しでいいわ?」
エイプリルは一部を自分の瓶に入れると、男に残りを返した。
・・・周囲からよこせ、とたかられているけど。
「テミス様に見せてみるわ。何か分かるかも知れない」
「そうだな」
ウルフは、溜息をつくと、
「とりあえずお前等、全員ついてこい。ついてこなければ、逃げないように気を失わせた上で、うちの者に運ばせるからな」
「・・・はい・・・」
大人しく、ウルフについてくる。
「これでリストの半分くらいは片付いたな・・・まだ他にこういう拠点が有りそうだ」
俺が言うと、
「とりあえず今日はこのくらいだろ。嬢ちゃんも何か調べてくれるようだしな」
ウルフは疲れたように言う。
先程の女と至近距離で対峙したのがこたえているのかも知れない。
「戻るぞ」
ウルフは地下に居た人達を促すと、地上に向かって歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます