第80話 心の機微に敏い

「・・・ほ?!」


ストラスがびくうっとする。

神々がざわっとする。


「おかしいとは思ったんだよな。悪魔にしては、アテナ様達と敵対する様子もないし・・・まあ、それを言うならルシファーやレヴィアタンもだけど」


「え、ルシファーやレヴィアタンが居るんですか?!」


リパーがびっくりして見回す。


「大丈夫ですよ、私がお護りします」


レヴィアタンがそっとリパーに寄り添う。

無視して、俺は続ける。


「力も破格みたいだし。以前時間遡行する存在が3人・・・柱?と言っていて。そのうち2柱が同じ存在なら、結局3柱ともか、というネタは普通にやりそうだし」


「ほーほー」


「そりゃ同じ存在なら同じ力持ってるし、決着もつかないよな。創世神のヒント・・・会った事あるし、雷くらい使えるだろうし、アテナの眷属の下僕?なら関係はあるだろうな」


「ほーほー・・・」


「そしてこうやって事態掻き回すの大好きだろ?」


「・・・証拠は・・・?」


ストラスが尋ねる。


「証明しろとは言われていない」


「・・・ほ・・・ほーほー」


みょーん。

羽を伸ばす。


神々があ然と・・・いや、アテナは微笑、トールはのほほん、オーディンとアルテミスがあ然としている。


「・・・ディーン殿・・・いつ気付いたのかね・・・?」


オーディンが苦々しく問う。


「エイプリルよりちょっと後に漠然と。考え纏めないように苦心しましたよ」


苦笑しつつ答える。

考えたら読まれるからな。


「・・・しかし、まだ創世神の正体の仮説に行き着いただけで・・・」


アルテミスが言う。


「その未来から来た使者、恐らく俺とエイプリルの子供だろう。1人しかいない・・・これは兄弟姉妹がいないという事だろうな。規模も状況も言わない・・・つまり何か勘違いさせようとしている。なら最小単位で考えるべきだ。俺がハーレムを作れば解決する、とも合うな。エイプリルも当事者になる」


「・・・く・・・」


アルテミスが呻く。


「そして、兄弟姉妹がいない理由だが・・・恐らく、同一の男女間では子供は1人までしか出来ない、と考えれば、過去に来てまでハーレムと言い出すのも説明がつく。エイプリルの追加要求はこの制約の緩和」


「・・・そこまで言われては、負けを認めざるを得ないな」


オーディンが溜息と共に言う。

合っているらしい。


「これでも、色々考えるのは得意なんです。人の心の機微にも敏いので」


例えば、ジリアンが途中から俺に好意を寄せていたのは気づいていた。

気づかないようにしてただけだ。


「・・・えっと、ディーンがハーレム作る話はどうなったの?」


ジリアンが尋ねるが、


「無くなりました」


リパーが答える。


微妙な空気が漂う中、エイプリルは優雅に紅茶を飲む。


「このお菓子美味しいですよ」


アテナがそっとエイプリルにお菓子を差し出し、


「有難う御座います」


受け取り、食べるエイプリル。


「・・・アテナ、君はこれを予想していたのかね?」


オーディンが尋ねるが、


「そんな訳無いじゃないですか。ディーンは思考を制御して、見事我々を出し抜いたのです」


「ふむ・・・」


ともあれ、これで解決だろう。

何も始まる前に終わって良かった。

後はストラスが俺達の子を捕まえて未来に送り返せば。


「困りましたね。クロノスとウラノスを追い込んで動かし、エイダやベティーナもハーレムに加える計画だったのですが。ヴェルローズは想い人が居るらしく断られましたが」


ストラスがぶつぶつ言う。

そんな事してたのか。

多分、さっき示してた村に配置してあったのだろう。


「クロノスとウラノス、みだりに神の立場を使って子らに行動を強制したのです。然るべき処罰が必要ですね」


やめてやれよ。


そうなると・・・やる事は1つか。


「リパー、ジリアン」


声をかける。

エイプリルが立ち上がる。


「はいっ」

「う、うん?」


リパーとジリアンが戸惑った声を上げる。


「茶番は終わった。レベル上げに行くぞ」


「「今から?!」」


「レベル上げから逃げるな。そんな言葉が有るわ?」


エイプリルが俺の横に並んで言う。


「いや・・・色々疲れたし・・・少しくらい休んでも・・・」


ジリアンが言う。


「ほーほー、では私は使者を未来に送り返したあと、出入口のタイルを全部黒くしてきますね」


「何でそんな事するの?!」


リパーが悲鳴を上げる。

まあ、別に汚れても掃除すればいいんだけどなあ。


俺達は神々に挨拶し、雲海の間を後にした。

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