第50話 大罪者

妙に時間を取られた。

急ごう。


そもそも、最初から気付かれなければ、忘れるとか不要だった訳で。

月夜の庭園を行使。

俺の正体に辿り着けないようにする。


「ほーほー、因果が歪んだ気がします。神威を感じる・・・月の属性ですかね、ほーほー」


やはり封印して放置したい。

エイプリルに食いつかれたアテナの気持ちがちょっと分かった。


〈そうなんです、あれかなり辛いんですよー。アマテラスとかも当てられて涙目になってますよー〉


アマテラス居たのか。


大量の悪魔が出現。

目には追えない速度でこちらに迫る。

無視して駆け抜けたい・・・メギンギョルズを行使、彼奴らを余裕で振り切れるくらいの身体能力を!


がたがたっ


迫ってきていた悪魔が片っ端から地面に落ちる。


「ぐ・・・痛い・・・これは・・・筋肉痛・・・?」


うめき声がそこら中で上がる。

・・・これ、相手を上回るステータスにして対抗・・・とかそんな存在じゃない。

起動した瞬間、相手が筋肉痛で倒れるんだけど。


「ほーほー、他者からスタミナを奪い取る・・・ですかな・・・?ほーほー」


流石にステータス上昇の対価として、相手に筋肉痛・・・とまでは見抜けないらしい。

と言うか、かなり速度上げたのに、普通についてきてるな、こいつ。


〈ストラスはアスモデウスと同格の大悪魔ですよー〉


何でそんな存在が軽く誓約とかしてくるの?!

周りを筋肉痛で倒しつつ、爆速で駆け抜け・・・そしてアスモデウスの元へと辿り着いた。


「大罪者アスモデウスよ」


低い声で呼びかける。


「ぬう、貴様は誰だ。どうやってここまで来た。・・・と言うか何故ストラスが此処に居る」


「ほーほー、今の私は、この方に誓約を捧げた身、ただの使い魔ですよ、ほーほー」


「何で?!」


アスモデウスが叫ぶ。


「大罪者アスモデウスよ。我が主神の神意により、お前を処する」


俺がそう告げると、


「・・・その力、低級神共の眷属程度ではないな・・・しかし、大神が動く程の事はしていないはず・・・名を名乗れ」


アスモデウスが剣を抜き放つと、こちらに向ける。


「我が主神の神意を伝える。一つ、直ちに捕らえた低級神を解放せよ。一つ、生涯をかけ、その罪を償え・・・汝等が作った娯楽施設は良い刺激となる。その運営を命ずる。ただし、節度を持った運営とする事と、治安の維持は遵守せよ」


厳かに告げる。


「そんな勝手な決め事が罷り通るか!その命、散らせてやろう!」


アスモデウスが剣で俺を斬りつけ・・・


パリン


アスモデウスの剣が割れる。


「アスモデウスよ」


「・・・何だ?」


呆然として呟くアスモデウス。


ゴウッ


ミョルニルを行使。

圧縮した雷が、虚空へと飛ぶ。

次元を震わせつつ・・・空間を突き破り、世界の外へと飛んでいく。


「次は当てる」


「参りました」


アスモデウスが土下座する。


アスモデウスに、詳細な命令書(自作)を渡す。

低級神は即座に解放され、アスモデウスの号令の下、悪魔達は遊技場等の娯楽施設の運営をする事になった。

・・・悪魔達は意外と楽しんでいるようだ。

魔剣や魔環、薬等は禁止。

街の治安も回復した。


おかしなギアスロールが残ったりしないか心配したが・・・それはないようだ。

少し人間関係が崩れた箇所もあったようだが・・・ある程度は仕方が無い。


戦勝パーティーも開かれ、リパーもたっぷり楽しんだようだ。

表向きには、悪魔が改心した事になっている。

低級神達は、天界が執行者を派遣、解決してくれたと認識している。


俺も神威を返還。

元の低レベル冒険者に戻った。

そう全ては元に。


「ほーほー、旦那、いい猪が捕れましたよ。今日は腕を振るいますね」


・・・何故かストラスが居着いてしまった事以外は。

しかもちゃっかり俺の事ばれてるし。

というか、アテナ達にも気付いている節がある・・・そもそも、実は知り合いじゃないだろうな?


ともあれ・・・これで色々解決した。

疲れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る