第83話 人類に与えられし試練の続編、その記録映像
「以上が、僕達が入手した記録だよ」
ジリアンが、胸を張って告げる。
とある世界の映像記録。
滅びかけたその世界の人類は、一夫一妻制を棄て、一主人複配偶者制とした。
まあ、所謂、ハーレムだ。
特に重点的に映されたのは、ハーレムを肯定する部分。
あとは・・・これはリパーの選択だろう、9歳の少女が成長後に結婚の約束をしているあたり。
俺とエイプリルもよく知っている世界だ。
なにせ・・・その世界の構築を、俺が手伝っていたからな。
映像を横流しした奴も分かっている。
そこの猛禽類だ。
「ディーンさん・・・同じ人間でも・・・ハーレムを肯定・・・いえ、常識と捉えている世界が有る・・・むしろ、一夫一妻制の方が非常識・・・」
リパーが告げる。
ストラスが色々蠢動して、1つ、いや、複数世界をかき乱して・・・
その理由は分かっている。
からかう為だ。
「・・・その・・・だな、ジリアン、リパー」
言いにくいんだが・・・
「僕達を受け入れてくれる・・・そうなのかい?」
ジリアンが期待に満ちた目をして。
「そもそも、私達は半神──そして、この世界では、一夫多妻もハーレムも、別に法でも倫理でも制限されていない・・・アテナ様は好んではおられないけれど」
エイプリルが、言葉を選びながら、告げる。
「つまり、俺達の状況は、むしろその世界に近い。だから、その世界の映像記録を見せられても、全く意味が無い」
俺の言葉に、ジリアンとリパーが固まる。
そう、本当に、欠片も、意味が無い。
では、何故そこの馬鹿が色々やったのか。
からかうためだ。
この一瞬の為だけに、色々・・・
本当にこいつは・・・
「・・・でも、この世界では、一夫多妻が推奨・・・つまり、エイプリルさんより、ディーンさんの意思が尊重される・・・」
・・・ああ・・・本当に・・・
エイプリルが、沈痛な面持ちで、
「・・・それは違うわ・・・ディーンは、私の意思をくんで、貴方達を断ってくれている・・・でもね」
エイプリルは一旦言葉を句切り、
「その世界は・・・主配偶者が、配偶者を増やして良いかどうかの最終決定権を持つのよ。役割分担、家の方向性は主人が決め、家という集団に対する内部的な決定権は、主配偶者が持つ。もし主配偶者の決定を無視して他の人と関係を持てば・・・それは浮気になるわ。つまり、その世界の方が、より明確に決められているのよ」
むしろ、俺達の関係性を法が保障している状態。
そう・・・その世界の例を持ち出すのは、本当に意味が無いのだ。
「・・・でもさ、ディーン。エイプリルとどこまで進んだのかな・・・?まだ・・・まだ、僕が間に入る余地あるんじゃないかな?その・・・キス・・・とか・・・その・・・手をつないだり・・・その・・・どこまでいったのかによっては・・・」
ジリアンが真っ赤になって告げる。
エイプリルが、
「そうそう、みんなに報告があったわ?来年の春頃、子供が産まれるのよ」
エイプリルが、愛おしそうにお腹を撫でる。
俺も、頬が緩む。
「うわ?!本当!凄い、おめでとう!!」
ジリアンが、立ち上がって喜ぶ。
リパーが、複雑そうな顔をする。
「どうしたの、リパー?」
ジリアンが小首を傾げ、
「いえ・・・おめでたいのですが・・・その・・・お二人の関係がどこまでって話が・・・」
「???」
リパーが真っ赤になって言うのを、ジリアンが不思議そうにする。
「まあ、今はやめておくよ。エイプリルも大切な時期だろうし。ただまあ、エイプリルとの関係性があまり進まなければ、僕も選択肢には入れて欲しい」
ジリアンが胸を張る。
うん、関係性が進むも何も、既に終着点なんだけどな。
ちなみに、結婚式も挙げたし、この2人も招待した。
純粋に、ジリアンの恋愛?知識が・・・
あの世界の人達を引っかき回したのは申し訳無いが。
まあ、神とはそういう存在だ。
気にしても仕方が無い。
「さて・・・次は、念じただけで相手を殺せる能力とか付与しましょうかね」
「頼むから、他の奴に迷惑をかけるな」
誰かこいつを止めてくれ。
【80万PV】冒険者になろう - 転生特典をスキップされてチートなしで転生させられたので色々諦めました - 赤里キツネ @akasato_kitsune
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