第31話 枯渇

ゴウッ


魔力が形を為し・・・現れたのはゴーレム!


「そのゴーレム・・・ランク2の500レベルです!」


リパーが叫ぶ。

高い!


「はっ!」


ジリアンが足止めの為、盾を構えて突っ込む。


ゴアアアア


ゴーレムが叫ぶと、周りから泥の魔物が6体現れる。

眷属召喚!


「現れた眷属は・・・ランク2の350レベルです!」


リパーが再び叫ぶ。

眷属でも十分高い!


リパーとエイプリルが軽い身のこなしで、脇を通り抜ける。

ゴーレムがジリアンを押し・・・


「チャージピアース!」


俺が武技を発動、魔力を纏った槍でゴーレムを押す・・・が、あまり押せない。


ゴウゴウッ!


リパーの放ったチャージアローがゴーレムに突き刺さる。

威力が高い。

特殊な矢だろうか。


「はっ!」


エイプリルが魔法を解き放つ。

無数の闇の剣がゴーレムを襲う。

刺さりはしないが、地面にゴーレムを縫い止める。


「今だ、引くぞ!」


ジリアンに号令をかけ、距離を取る。


「了解!」


ジリアンも正規ルートの方へ駆ける。


ガシャン!


ゴーレムが剣の戒めを解き、活動を再開。

眷属も見た目に似合わない速度でこちらに向かってくる。


「はっ!」


逃げながら槍を投擲、泥の魔物のうち2体を傷つけ、その動きを弱らせる。


「やっ!」


氷の槍が出現、泥の魔物の進路を妨害。


「来ないで!」


リパーが放ったチャージアローが、再びゴーレムをのけぞらせる。


徐々に距離が詰められ・・・


「はっ!」


エイプリルが解き放った魔法、無数の水の刃が、泥の魔物を粉砕。ゴーレムをよろけさせる。

そこを全員で一斉攻撃。

そして再び離脱。


「もうチャージしてある魔法はないわ」


焦りを隠せず、エイプリルが言う。


「上級魔石矢、もうストックないです」


リパーが告げる。


徐々にゴーレムが迫る。

本来は鈍重なそれも、ここまでレベル差があると鈍重なのはこちらだ。


角を曲がったそこに・・・人影。


「どけ!」


そこに居たのは・・・ランク4、喰人鬼オーガーウルフ!


ウルフは、目にも止まらない早さでゴーレムに近寄ると、一振りでゴーレムを両断・・・そのままゴーレムは魔石となって落ちる。


ゴウッ


流星が落ちてきたのかと思うような音と光が走り・・・残っていた泥の魔物が全てかき消える。

・・・強い。


「終わり、と」


斧を肩に担ぎ、ウルフがこちらを向く。

にっと笑い、


「お前等、レベルの割にかなりやるじゃないか。褒めてやろう」


「あ・・・有り難うございます」


俺は素直に礼を述べる。


「なあに、礼はいらん。その代わり、明日ちょっとクエストに付き合え・・・勿論、そこの可愛い女の子達と一緒にな。・・・男は別にどっちでも良いが」


・・・断りたいところだが、命を助けて貰ったのは事実な訳で。


「まあ、種を明かすと、そもそも俺の目的が奴だったんだがな。緊急クエスト。階層3で淀みが確認されたので、調査と解消・・・もっと下の階層だと放っておくんだが、この階層を放置すると犠牲者が出る可能性があるからな」


「向こうにももう一つ淀みがあったけど、それも目的のものかしら?」


エイプリルが尋ねると、


「おう、そんなものがあったのか。場所を教えろ!」


ウルフが食いつく。


リパーがウルフのマップに対し、操作をして・・・魔力溜りの場所をポイントする。


「お前等、レベルに見合った場所で狩れよ。離れすぎだ」


ウルフが呆れて言う。


「気をつけます・・・」


返す言葉も無いので、素直にそう言う。

言うだけ。


「まあ、もう一つの場所を教えて貰ったのは感謝する。そしてそれとは別に、ちゃんと明日の朝は酒場にいろよ。俺の格好いい活躍を見せてやるよ」


ウルフはそう言うと、後ろでにバイバイと手を振りつつ、ダンジョンの奥に消えていった。


「・・・強いね・・・ランク4・・・」


リパーが言い、


「ランク3になるのに100年かかる人もいるし・・・100年かかってもランク3になれない人も多いってさ」


ジリアンがうんざりして言う。


「まあ、みんな一朝一夕で強くなった訳じゃ無い。のんびりやるさ」


そう言って、帰途についた。

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