概要
呼吸をする人形は物だろうか 《―電撃大賞 三次落選作》
呼吸をする人形があった。
人形は主人たるものに従順であり、いかなる命令にも逆らわず、壊れるまで決してその側を離れない。
人形は美しい。それは悪意を知らない故に。
奇跡のごとき人形を創った〈人形師〉は人形とその主人の幸福を信じて疑わなかった。命を削って人形を創り続けた人形師の死後、人形師の片割れとも言える 実弟 キョウが人形の幸せを確かめる為に旅立った。相棒たる人形 レムノリアを連れて。
されど、世界は優しくはなかった。大多数の人形はひどく虐げられ、不幸の底で壊れかけていた。
それでも人形は従順に、主人を慕い続ける。それは悲劇だった。
斯くして、人形師はひとつの決断をくだす。悪意を知らない人形の、最期の願いをかなえる為に。
電撃大賞 三次選考落選 (改稿)
人形は主人たるものに従順であり、いかなる命令にも逆らわず、壊れるまで決してその側を離れない。
人形は美しい。それは悪意を知らない故に。
奇跡のごとき人形を創った〈人形師〉は人形とその主人の幸福を信じて疑わなかった。命を削って人形を創り続けた人形師の死後、人形師の片割れとも言える 実弟 キョウが人形の幸せを確かめる為に旅立った。相棒たる人形 レムノリアを連れて。
されど、世界は優しくはなかった。大多数の人形はひどく虐げられ、不幸の底で壊れかけていた。
それでも人形は従順に、主人を慕い続ける。それは悲劇だった。
斯くして、人形師はひとつの決断をくだす。悪意を知らない人形の、最期の願いをかなえる為に。
電撃大賞 三次選考落選 (改稿)
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!言の葉のひとひらずつが紡ぐ玉響が美しい。繊細艶美なダークファンタジー。
人形に生命を吹きこむ人形師。
彼は寿命と引き換えに、無機物に命を宿します。
人形は【物】ではなく、【者】として生きます。
人形に生命を吹き込む術を誰にも教えず、純粋なまま、此の世を去ってしまう人形師。
穢れなきゆえに伴う痛みと悲しみ、あるいは幸せの在り方を、此の世に残された者の生きざまを通して考えさせられます。
善意しか知らなかった人形師の魂を宿した人形たちは「純粋」で、悪意を持ちません。
疑いを知らない「純粋」が悪意に染まるとき、人形は無慈悲な殺戮の道具になります。
残酷な舞台で暴走するしかなかった人形の魂。
その悲哀と遣る瀬無さは、人間の生きる舞台に通じる感情であり、皮膚感覚に訴えか…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人形の罪は人の罪――生かすも殺すも人間次第
人に買われたその人形は、人の言葉を解し、話し、痛みを感じる生きた人形。
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後に人形師は探し求める。自らが売った人形たちの行く末を見るために。
そして見る。数多の契約違反に晒されながらも、買い主に逆らうことなく従い続けるその姿を。
初めは人形を救いたかっただけだった。だが、その感情が行動が悲劇を生んだ。
罪を背負った人形師は、同じ過ちを繰り返すまいと壊れかけた人形の元へ――
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善も悪もなく、ただ純粋に買い主の命に従う人形たちの生き様…続きを読む