概要
それは、鶴でなければならなかった。
カクヨムWeb小説短編賞2021【短編小説部門】
☆短編賞☆を受賞致しました 読み切りでコミカライズします!
(満月の晩に泉にいるのは鶴ばかり)
それは誰もが幼い頃から繰りかえし聴かされる御伽噺のような掟だ。
静まりかえった泉のほとりでは姑娘がひとり、身を清めていた。その背には鶴が、いた。翼を拡げていまにも舞いあがらんとする、それはそれは美しい鶴が。
故にそれは。
鶴でなければならなかった。
《鶴》――脈々と一族に受け継がれた因襲。鶴とさだめられた娘は満月を映した浄瑞だけを吸い、十年掛けて刺青を育て、天に昇る。つつがなく鶴が昇れば、むこう五十五年に渡り豊穣が約束され天候の禍に見舞われることはないとされる。故に一族は帝から重んじられ、庇護されてきた。
鶴には衛(まもり)が就く。従者
☆短編賞☆を受賞致しました 読み切りでコミカライズします!
(満月の晩に泉にいるのは鶴ばかり)
それは誰もが幼い頃から繰りかえし聴かされる御伽噺のような掟だ。
静まりかえった泉のほとりでは姑娘がひとり、身を清めていた。その背には鶴が、いた。翼を拡げていまにも舞いあがらんとする、それはそれは美しい鶴が。
故にそれは。
鶴でなければならなかった。
《鶴》――脈々と一族に受け継がれた因襲。鶴とさだめられた娘は満月を映した浄瑞だけを吸い、十年掛けて刺青を育て、天に昇る。つつがなく鶴が昇れば、むこう五十五年に渡り豊穣が約束され天候の禍に見舞われることはないとされる。故に一族は帝から重んじられ、庇護されてきた。
鶴には衛(まもり)が就く。従者
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!月が追いかけていくように
ほっそりとしたうつくしい女、鶴呤(かくれい)は「鶴」だ。鶴は豊穣をもたらす。だが鶴はやがて、その豊穣と引き換えに月に還らなければならない。その日まで鶴を「護る」のは、低い身分の鶫刹(とうせつ)という青年であった。鶫刹は自問する。俺にとって、鶴とは。
この物語の基本線は、鶴である鶴呤と衛(まもり)である鶫刹の関係性です。二人がどのように出会い、どのような関係を築き、どのような未来に向かって進んでいくか。この物語は常に二人を軸として展開されます。
そこでおもしろいのは、鶫刹のこころが「見えない」ということです。
本作の視点は鶫刹のものです。地の文では鶫刹の心理が表現されます。しかしながら、鶫刹…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あなたごと愛するためには、そうするしかなかった……
文章が、この言葉しかないと言う当て嵌まり方をしており、上手いだとかそういう表現ではいけないように思えました。初めからこうやって生まれて来たと言うべきでしょうか。初めから終わりまでがひと繋ぎの文章としてどこかに存在していて、それをそのまま綴られたような。そんなしっくりさがありました。いや、しっくりというのも失礼と思えるほどに。
ラストシーンは、悲しみの先にある情熱、絶望の暗闇の中でしか見えない小さな小さな光のように思えました。
その光は多分希望という言葉すら生ぬるい、焦げるような「思い」だったのかなと感じました。
美しかったです。
ありがとうございました。