第15譚 敢えて 罰を
「私はね、時に現実が疑わしくなることがあるのだよ」
遥かに深くて、静かな声だ。
彼の語りは静寂をまとい、夜の
キョウは姿勢を整えて、真剣に盲目の騎士を見つめた。
「私は騎士だった。いや、二度と戦えなくとも私の精神は、紛うことなき騎士だ。陛下の
キョウが黙って、頷く。軽々しい相打ちを差し込む気にはなれなかった。椅子の軋みから、ユリウスは無言の返事を受け取ったようだ。
「
一言一言は
きっぱりと、彼は語るのだ。
「されど陛下の御取り計らいにより、私は
「……あえて罰というのでしたら、貴殿はすでに受けているのではありませんか?」
「盲いた目かい? あるいは病かい? いやそんなものでは、
「どういうことでしょうか?」
ユリウスが一瞬、言葉を詰まらす。
「彼女は、こんな私を慕ってくれているんだ。プエッラは善い娘だから」
悲しむように、慈しむように。
彼は嘆く。
「彼女を残して逝ってしまうことが、ただ申し訳ない」
彼は塞がった瞼を震わせて、眉間に力を込めた。
どう言葉をかけるべきかと考えたが、
「僕も似たようなものです。僕は、罰が欲しい。罪には罰を。そうでなければ安堵などできない。けれど決して巻き込みたくない相手を道連れにしてしまっているのが現状だ。なので、貴殿の御気持ちは
ユリウスは虚を突かれたようだが、我に返ってからゆっくりと頷く。
「そうか。君はまだ若いのに。私なんかと同じような場所にいるのか。そうか。そうなのか」
同情ではなかった。
どこまでも痛ましそうに繰り返す。
「近い将来に逝ってしまう私が、プエッラにしてあげられることはなんだろうか。ひとつの解を導いたのだが、はたして正しいのかどうか解らないんだ。私は――」
言いかけたのが早いか、食後の紅茶を持ってプエッラ当人が姿を表す。何を話していたのかも知らず、彼女は上機嫌だ。レムノリアと意気投合して、手際よく片付けが進んだようだ。
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