第86話 軟体動物?
「神の力を持っていると判った今でも、報復を考えているんですか?!」
「当然だ。それならそれでやり方がある!」
しまった!
情報を与えすぎたか!
悪魔でも途中で気づいて止めたのに、俺はペラペラと……。アホか!
これは脅してでも止めないといけない!
「まだ教えていない神の力がありますよ?
それでもやるんですか? 貴方も滅びますよ?」
「ふっ。俺が滅ぶ事は織り込み済みだ」
「はぁ?!」
「お前達人間は、周囲の人間が巻き込まれて死ぬ事を良しとしないだろ。
それを利用する」
「なんだと?!」
その発言後、悪魔は魔法陣を出した。
そこから出てきたのは…………虫?
「これはグラスホッパー。これを100匹召喚した。
もし、俺が滅びても消える事は無い!」
「ただの虫ですか?」
「違うわ!
これは植物や動物など、何でも食べる魔界産の虫だ。
そして自分の体重分食べると、分裂して増える。
現在100匹でも、すぐに200・400・800と増えるぞ」
虫なのに分裂して増える?!
スライムとかアメーバみたいなものか?
自体重だけ食べたら分裂?
重さって1~5gくらい?
肉食ったら、すぐに分裂するじゃねぇか!
「ふふふ。しかも現在は私が抑えている。
拘束を解けば当然解き放たれる。
私を滅ぼしても解き放たれるぞ。さあ、どうする?」
くっ!
なかなかの策士!
ん? でも放っておいたらどうなるんだ?
「放置したらどうする気です?」
「あぁ。私がこのまま何もしないと?
そうだなぁ、別の場所に同じ物を5匹づつ放すか。
勿論探しに行く素振りを見せたら、ここに居る100匹も即座に放す」
「……で、でも魔界産と言っても虫でしょ? 冒険者とかに狩られるんじゃ?
そうだよ、森の中なら獣やモンスターも居るし!」
「それくらいは想定済みだ。
簡単に負けるような物を呼ぶとでも思ってるのか?
ドラゴンクラスなら秒殺されるだろうが、そうそう負ける事は無い。
それにこち小さな虫1匹を探して殺している間に、どれだけ増殖しているかな?」
た、確かに。
5分で1匹増えるゴキブリが居たとして。
家で見つけた時に殺そうとしても逃げられる。
見つけた瞬間に殺してないと、物陰に隠れて増えているだろう。
殺虫剤を吹いても、効果が出るまでに増えていたら?
ん? 殺虫剤?
日本製だけど、効かないのかな?
……いやいや、効くとしても即死しないだろう。
それに外で殺虫剤を撒いても拡散して効果は薄いかも。
農作物に撒くようなやつなら広範囲もいけるかもしれないが、購入して届く期間待ってくれる理由がない。
こりゃマジでヤバい。
俺の家は勿論何の被害も無いだろう。
だが、すぐに隣人の家は襲われる。家も人間も。
魔法使いは優秀だろうし、令嬢の家には忍者みたいな人も居る。
だが全部に対応出来るだろうか?
シロクロと一緒に戦っても、倒すよりも増える方が速そうだ。
俺が悩んでいると、足元にシロが戻ってきていた。
「シロ、あいつを見張らなくて良いのか?」
「見張りはクロがしています。大丈夫でしょう」
「何しに戻ってきたんだ?」
「私に作戦があります」
「作戦?」
「それには主の協力が必要です」
「この状況を打破出来るのか?」
「ええ。新たに呼ぶ事も出来なくなるでしょうし、呼んでいる100匹も逃しません」
「そうなのか……じゃあ許可する! どうにかしてくれ!」
「わかりました」
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