第37話 イヤなものはイヤ

2日後。

シロと一緒に今度はシャティさんがやってきた。

何故誰も単独では来ないのだろうか?

シロ曰く、そんなに危険な道のりじゃないらしいのだが。

あっ、もしかして夕食やお酒を狙ってる?!

出すけどさ。


「こんばんは。お邪魔します」

「どうぞ~」

「今日お伺いしたのはですね、ギルドの事です」

「ギルドマスターが相談しにきたやつ?」

「それです。カズマさんのアイデアを実行した所、人員が集まりました!

 ありがとうございます!」

「集まったなら良かった」

「お蔭で不正をしていた者は逮捕させる事が出来ました。

 これでギルド内も改善出来ると思います」

「良かったね。ちなみに逮捕された者は、どんな罰を受けるの?」

「王国法に則って罰を受けます」

「……王国法ってのに詳しくないので、解説をお願いします」


そんな法律があるのね。

ってそりゃそうか。国だもんな。


「横領・癒着・詐欺・脅迫、これくらいの罪が付くでしょう。

 なので、懲役10年ですね。場所は鉱山でしょう」

「懲役10年は判るけど、鉱山って?」

「そこに送られて、強制労働です」

「あっ、刑務所とか無いんだ……」

「ありますけど、そこは貴族や王族が入る所ですよ?

 一般人は、罰金刑・強制労働・死刑のどれかですね」


怖っ!

牢屋に入るってのが無いのか。

……よく考えたら、別に犯罪を犯す事が無いので、罰が重くても関係無いか。

濡れ衣を着せられても、家から出なきゃ捕まらないし。


「ところで、どんな人がギルドに入ったの?」

「基本的に主婦の方です。

 朝と夕は家が忙しいから出てこられませんが、日中は時間があるという事だそうで。

 受付等は正社員がするとして、細々とした事をしてもらう事になりました。

 お蔭で私も受付に専念出来るようになりましたよ!」

「それは良かったですね。

 ところで主婦以外にも居るんですね」

「え、ええ……」


おや? 何か言いにくい感じですな。

問題がある人でも来たのだろうか?


「……実はですね。サーラさんが居ます」

「え~と……誰?」

「伯爵の娘さんです。最初にシロさんに絡んだんです。

 それが原因で今回の事に」


へ~。

その人がバイトしに来てるんだ。


「本人の話ですけど。

 どうも陛下に怒られたらしいんです。

 しかも親が、自分の罪を逃れる為に娘を勘当したそうです。

 そこで初めて、親の問題・自分自身の問題・自分の環境、こういう事に気づいたそうで。

 反省と謝罪の意味も込めて、無償で働いています」


あ~、ラノベでありそうな話だ。

それで酷い事をした人に謝罪し許してもらって仲間になるんだよね。

ハーレム要員とも言うか?


「それで、今日なんですけど……」

「うん? 何?」

「サーラさん、シロさんに謝ってたんです。

 でもシロさんは許しませんでした。『主の邪魔をした者を許す訳が無いでしょう?』って……」


ほう。シロさんはテンプレ通りにはしませんか。


「シャティさんは、どう思います?」

「そうですね……本当に改心しているようなので、許してあげて欲しいとは思いますが……」

「つまり?」

「主であるカズマさんが言えば……」

「そうですねぇ……ま、シロが許さないのであれば、許さないままで良いですよ」

「ええっ?!」


考えてみれば、シロを誘拐しようとしたヤツだろ?

改心したのは良い事だけど、許すかどうかは別の話。

ラノベのような優しい主人公じゃないのでね。

それにあれは、仲間を増やす為の通過儀礼のようなものだしさ。

こっちは仲間なんか要らないんだ。シロクロが居るから。

いざとなれば、ペットショップで買って神様に頼むって手もある。


それ以前に、うちのペットに仲間が必要か?

邪魔なだけだろ。


「ど、どうしてですか?」

「食い下がりますね。

 まぁ許すように言うのは簡単ですが、許したとしても仲良くはなれないでしょう。

 それでも良いですか? 多分仲良くして欲しいのでしょう?

 言葉では許せますけど、感情までは無理ですよ。

 言い方は悪いかもしれませんが、レイプ犯が捕まって刑期を終えて出てきたとしましょう。

 貴方は自分の隣の家に住んで欲しいですか? 俺だったらイヤですね」

「うううぅ……」


法律的には許されていても、イヤなものはイヤなんだよな。

偏見かもしれないけど、皆心の中では許してないと思う。言わないだけで。

簡単に許す主人公の頭が変なだけだって。

なんせ、異世界に行っても不便さよりも自由さを選ぶ人達だからね!

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