第36話 人を雇う方法
その日の夕方、シロがギルドマスターを伴って帰ってきた。
会話内容はやはりあの貴族に関する事だった。
簡単に言えば、王が動きその貴族を呼び出したらしい。
貴族は勘が働き、すぐに兵を呼び戻してそれから城に向かったんだそうだ。
ギルドマスターの予想では、怒られるが事実の確認が出来ないからそこまで問題にはならない、との事。
ただ、娘の方はギルド内で問題を起こして骨折までしたので、隠せないみたい。
ギルドマスターが報告したせいだと思うが。
で、娘も城に一緒に呼び出されたらしい。
読んだ感想は「ふ~ん」くらい。
特に迷惑じゃなかったしね。出る事も無いから邪魔にもならなかった。
シロとクロはおもちゃ代わりにしてた感がある。
いや、クロの練習台か?
……そう考えると、俺の方が悪いようにも見えるな。
ま、どうでも良いか。
それよりももう一つの用事の方が俺にとっては重要だ。
それは俺が見つけた不正?の事。
使い込み? 癒着? 横領? 横流し? なんかそんなやつ。
「どうしたら良いと思います?」
「いや、罪だと思うなら、警察?に突き出せば良いんじゃない?」
「そうすると人手が足りなくなるんです……」
「なら、雇ったままでお金だけ返してもらえば?」
「捕まらないとなれば、犯罪を認めないでしょう。つまり返さないと思います」
「じゃ、今後はダメだよって言って、許す?」
「そんな程度で許せる内容じゃないですよね?」
どうしろって言うんだ。
「う~ん、やっぱり捕まえようよ」
「多分ですが、この事に関しては何人も関わっていると思うんですよ。
芋づる的に捕まっていくんじゃないかな~と。
そうすると、完全に人手不足になるんです!」
「そう言われてもなぁ、放置したギルドマスターの罪でもあるんじゃない?」
「ぐっ! で、でもですね! 私がなったのは2年前なんです!
それまでは他の場所のギルドに居たんです!」
「そうですか……。
まぁ、逮捕させて人手不足を何かの方法で補えば良いって事か」
「ええ、そうです! 一番良いのはカズマさんがギルドに来て手伝ってもらう事なんですが……」
「それは無理」
「ですよねー。何かアイデアを! お願いします!!」
人手不足を解消ねぇ。
日本での方法を言ってみるか?
「じゃあ、高給で人を雇う。これならすぐに集まると思う」
「財政が……」
「あぁ、使い込み?されてるもんな。金は無いか。
じゃあ次の案。冒険者ギルドなんだから、冒険者に依頼を出す。手伝えってね」
「それなら安く済みそうですが、出来るような冒険者がいません……」
「そうか? 中には居ると思うぞ?」
「そういうのがイヤで冒険者をやってるんですよ、皆」
「ま、自由業みたいなもんだもんな。今更勤めは無理か」
「そうなんですよ。シャティを雇えただけでも珍しい事なんです」
「あぁ、元冒険者だったね」
「他の街から人員を一時的に借りるってのは?」
「皆、その街の住人なので。離れたがらないと思います」
どうしよう。
あっ、簡単なのがあるじゃん。
「じゃあバイトを雇おう。パートでも良いな」
「えっ? バ、バイト? パート?」
「あら? そういう概念は無い?」
「え、ええ。どういう事ですか?」
「簡単に言えば、日雇いみたいな物だよ」
「日雇いですか。毎日雇ってたら正規雇用と同じでは?」
「そうじゃないんだ。
例えば、朝や夕方の忙しい時間帯だけ来て働いてもらうんだよ」
「えっ? そんな事可能ですか?」
「多分考えてるのは、職を探している人の事だと思うんだけど。
そうじゃなくて、主婦とか自営業してるけどその時間はヒマしてる人を雇うんだよ」
「主婦?!」
「そう。家事の合間にギルドで働いてもらう。
主婦はヒマな時間にお金が稼げて嬉しい。
ギルドは人手不足が解消出来て嬉しい。ウィンウィンでしょ」
「な、なるほど……」
「重要な案件だけは正社員がすれば良い。
掲示板に依頼を貼るとか掃除とか、やってもらえる事は沢山あると思うんだ」
何やら感動してる。
そうか、そんな概念は無かったのか。
ある意味、冒険者と同じようなものだけどねぇ。
ま、デメリットもあるけどさ。
社会保障はどうなるのかとか、強面の冒険者の相手が出来るのかとか。
その辺は頑張ってもらおう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます