第38話 2つの要件
説得を諦めシャティさんは帰って行った。
しっかりと晩飯を食べた後で。
「シロ、どうして許さなかったんだ?」
「許す理由がありません。それに仲良くしようと言われてもする気が無いので。
そもそも、猫が誰にでも懐く訳ないでしょう?」
「……それを猫が言うなよ」
確かにそうかも知れないけどさ、猫が言っちゃあダメだろ。
まぁ、俺は家を出ないからどうでも良いんだけどさ。
3日後。
またシロがシャティさんを連れて帰ってきた。
シャティさんも大変だねぇ。
「今回は要件が2つあります」
「ほいほい。何でしょう?」
「1つは今年のギルドの会計の書類を持ってきました。
整理をお願いします」
「仕事ですね。了解です」
これはクロ案件だな。
判ったのか、横でしっぽ振ってるし。
頑張れ。
「もう一つはですね……良いニュースと言うか、悪いニュースと言うか…………」
「聞くのが怖いな。……何です?」
「実は王都から使者が手紙を持って来ました」
「うん? それで?」
「開封していないのですが、多分書面から陛下からの手紙だと思われます」
「陛下って、この国の王様?」
「そうです。それがコチラになります」
王様から手紙を貰ってしまった。
おおっ! 蝋封だ! 初めて見たぜ!
早速開けてみる。
…………読めない。
「クロ~! 読んでくれ!」
「判った~!」
「何でカズマさんが読まないんです?」
「え? えっと、こういうのはクロの役目なんだ。
と言うか、文字を読む練習と言うか、アレなヤツだよ」
「は、はぁ」
内容は単純だった。
いや、政治家らしく、回りくどい書き方だったけど。
簡単に言えば「賢者であるカズマ殿を城に招きたい」という、ある意味召喚状。
今来てる使者と共に王都に来いって事だ。
「凄い! 名誉な事ですね!」
「そうなの? まぁ行かないから関係無いけど」
「行かないんですか?!」
「うん。行かない。忙しいし」
「いやいや! ギルドの仕事なんか、後回しで良いですよ?!」
「それ以外にも仕事があるから。
おっと、そう言えば、封印の仕事もしてるしね!」
「忘れてたみたいに言ってますけど……」
「ワスレテナイヨ? ヤダナァ、ナニイッテルンダカ」
そうです。
封印の仕事があるんです。
家を出ると封印がアレして、アレなのがアレするんです。
決して面倒だから、とかではありません。
「どどど、どうするんです?!」
「いや、だから行かないですって。使者の人にはそう伝えて下さい」
「私達が怒られますよ!!」
「そんな心の狭い王様じゃないでしょ? 大丈夫大丈夫」
「えっ? 陛下をご存知なんですか?!」
「いや、知らないけど。想像?」
「え~?!」
だって、俺を呼ぶのにわざわざ使者まで立てるような王様でしょ?
しかも多分だけど、封印をしてるって事も知ってるはず。
だから断っても問題無いって。
一応、パソコンで謝罪の手紙を書いてシャティさんに渡した。
俺が動く気が無い事が判ったのか、手紙を持って気落ちしながら帰って行った。
しっかりと晩飯を食べて。
俺んちって食堂?
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