第39話 知らないおっさん

それから1ヶ月。

召喚状の事なんかすっかり忘れてた頃、突然の来客。

玄関におっさんが立っていた。


ギルドから聞いたのか、ちゃんとインターホンを押してきた。

航空写真には敵意のある黄色の点で表示されていない。

誰だろ? ギルドの人?

冒険者にしては格好がラフ過ぎる。


あぁ、違うな。

よく見たら少し離れた所に、別の人が2人表示されている。

おっさんがラフなのでどうやって来たのかと思ったけど、2人がここまで護衛したんだな?


「はいはい。どちら様でしょう?」

「こちらはカズマ殿の家で間違いないかな?」

「そうですけど?」

「私はこの国を治めているランリーという者だ。入れてもらえないかね?」


……え~と、それって総理大臣?!

ああっ、違った! 王様だ、王様!!

マジ?! 本当って書いてマジ?!

と、とにかく許可出さないと!

その前に結界の事を説明しないと!


「あの、王様。結界がありまして。敵意があったりすると通れませんが……」

「私はカズマ殿に対して敵意も害を与えようとも思っていない。

 と言っても判らないとは思うが」

「無ければ、許可すれば通れます」

「では?」

「許可しますので、どうぞ通って下さい」

「うむ。共に来た者も良いかね?」

「敵意が無ければ大丈夫です。許可します。

 ああっ、今、迎えを出しますので!」

「ありがとう」


「クロ~~~!」

「何? ご主人様。どうしたの?」

「人が来た! 迎えに行ってくれ!」

「は~い」



航空写真を見てたら、護衛の人もやってきた。

あっ、2人共結界に引っかかってる。

カメラで見てみよう。


あ~、完全に護衛だね。

いかにも!って人が2人居るよ。

必死に結界を叩いてる。王様は呆れた顔してる。

あっ、そのままクロの案内で家に来たよ。護衛は置いて行くのね。

俺も危害を与える気は全く無いけど、王様が護衛無しで良いのか?


そのまま王様は律儀に玄関で靴を脱ぎ、リビングにやってきた。

どうやらクロに教えられたらしい。素直に子犬に応じるって……。


「貴方がカズマ殿か?」

「そうです。初めまして」

「うむ。先程も言ったが、私がこの国を治めているランリーだ。よろしく」

「ま、ま、お座り下さい」

「うむ。失礼する。

 所で護衛の者なんだが、どうも敵意を持っていたようで通れなかった。

 だが、悪い者ではないので、許して欲しい」

「気にしてませんよ。多分ですけど、出迎えもしない無礼者め!とか思っているんでしょう」

「はははは! 自分でそれを言うかね! まあその通りだろう」

「王様は気にしてますか?」

「ん? 全然? 突然訪ねたのは私の方だ。事前に連絡してないこちらが悪い。

 それに腹を割って話をしたかったのでね。出迎えとかそういう上下を決めるような事は不要だ」


ふ~ん。日本人の俺からすれば話の分かる王様だな~と思う。

でもこっちの世界の基準じゃ無礼でしょ。大丈夫かな?

……結界があるから大丈夫か! 王様も通れたしね!

結界内限定の極秘会談って事で。


俺は紅茶を入れて王様に出す。

さて、要件を聞かなきゃね。


「それで、本日はどのような要件で?」

「うむ。話す事は沢山あるのだが。

 まずは謝罪だ。我が国の貴族がバカな真似をしてすまなかった」

「それは……うちのシロも好き勝手してますので。

 お互い様って事で水に流しましょう」

「そう言って貰えると助かるな」


そうだ。ついでにラノベでよくある展開について聞いてみるか。


「そういう貴族はよく居るんですか?」

「恥ずかしい話だが、少なからず居るな……」

「処罰されないので?」

「重鎮だったり、長く仕えていたり、と色々あってな……。

 簡単に処罰と行かないのだよ」

「そうなんですか……」

「何か?」

「いえ。そういう国の話を本で読んだ事がありまして」

「ほほぅ、なかなか興味深い話だ。どう思った? 素直に言ってくれ」

「え~、ヤバいんじゃないかな~と、昔思った事がありまして」

「どうして?」

「ほら。国民は判らないじゃないですか、そういう王様の事情は。

 だから好き勝手してる貴族を見ると、王は何やってんだ、と。

 そして国民は不安になり流出します。

 それに、貴族が国を操りだしたりと、ヤバい事態になりかねません」

「……それも本に書いてあったのかね?」

「まぁ、そうですね。あっ、でも、創作なんで。あまり気になさらず……」


あっ、ヤバい。

考え込みだした。ただラノベの話をしただけなんだが。

主人公が活躍出来るように作られた話ですよ! 真に受けないで!

ほら、権力に逆らう主人公ってカッコイイって話ですから!

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