第40話 アレな物の正体は
「王様、王様!」
「むっ? 何だね?」
「そんなに考えなくても。創作の話ですから」
「はははは。違うだろ。君の考えだ。
我が国を思って創作と言いつつ苦言を呈してくれたのだろう? 判っている」
「いえ、本当なんですよ」
「はは、ではそういう事にしておこう。
貴族の事だが、考えてみるよ」
どうも皆、俺を賢者にしたいらしいね。
ラノベに書いてあった事が本当にあるのかを質問しただけだし。
まぁ、これで国が良くなるなら良いか。俺には関係無いしな!
「さて、次の話だが。
カズマ殿はここに危険な物を封印していると言う。
それは本当かね?」
「そうですね」
「それは何か聞いても良いかね?」
ちっ! それを聞くのかよ。
何か適当に返答しなきゃ。何が良いかな?
俺をここに呼んだ神様って事にするか?
いや、さすがにどこかで信仰されてる可能性もあるから、それはマズいか。
それに名前も知らないし。
う~ん、どうしよう。
あっ、そうだ! 魔素を持って来たんだから、魔素が埋まってる事にしよう。
「実はですね、この下には『魔素』の塊が埋まっているのです。
あっ、魔素って判ります?」
「知っているぞ。魔法の元となる元素だろ。それの塊?」
「そうです。巨大な塊でしてねぇ。地殻の変化で地上に上がってきたみたいなんですよ~。
それから放出される魔素が大量でして。大量に出るとどうなると思います?
モンスターのレベルが上がったりするとかしないとか。とにかくヤバいんです。
なのでそれを封印して、少しづつ放出するように調整しているんです。納得しました?」
「う、うむ……。そんなに早口で喋らなくても。危険性は理解出来たぞ」
「ご理解頂き、ありがとうございます」
「だからいきなり現れて、このような家を建てて結界を張っているのだな。
我が国内の事。助かる。ありがとう」
「いえいえいえいえ。勝手にやってる事ですから」
理解はして貰えたようだ。
しかし、一国の王が頭を下げるのはやめてもらいたい。
誰も見てないけど、風聞が悪いだろ。
「ところで、その魔素は見えるのかね?」
「いえ、見えませんね。どうしてです?」
「他の者に説明するのに、目で見えるようなら簡単だからだ」
「なるほど。でも見るのは難しいですねぇ……。
あっ、譲渡する事は出来ますよ?」
「んんっ?! 魔素を譲渡?! どういう事だ?!」
「え~と、俺が魔素を取り込んで、貴方に渡すって事です」
「魔素を取り込む?! 渡す?!」
「……そういう事が出来る人って、もしかして…………」
「そんな者は居ない」
「あっ、やっぱり……」
「出来るのなら、是非やってくれ!」
俺のスキルにある『魔素譲渡』。スキルにあるくらいだから、出来る人が居ると思ってた。
これっていわゆる『ユニークスキル』ってやつなのね。
そういう事は書いてくれないと~。詰めが甘いなぁ、神様よぅ。
とりあえず王様に魔素を1だけ渡してみた。
シロやクロでも20が限界だから、王様に大量に渡すのは危険だろう。
限界以上渡したらどうなるか知らないけど。受け取れないだけなのか、破裂するのか。
「……これで魔素が私に入ったのか?」
「ええ。クロ~、鑑定してみて」
「うん! うん、入ってるよ」
「おおっ、クロ殿は鑑定も使えるのか! 優秀だな!」
「ボク、優秀だよ!」
「ははははは! すごいすごい!」
クロは褒められてしっぽぶんぶんだ。
今は頭を撫ぜられている。こりゃ懐いたな。
「……カズマ殿。何の変化も無いのだが?」
「そうですか。でも、間違いなく入ってますよ」
「どうやったら確認出来る?」
「そうですねぇ。まずはやっぱり鑑定でしょうか。
出来る人が居れば、見ただけで判ります。
他には……あぁ、魔法を使うってのも手ですね」
「魔法を?」
「ええ。普通はMPというか魔力を使いますよね?
代わりに魔素を使うと考えながら魔法を使うんです」
「ふむふむ。するとどうなる?」
「俺達の場合は威力が上がりました。それも格段に」
「ほうっ! 実験してみても良いかね?!」
「良いですけど、結界内では魔法は使えませんよ?」
「では少し失礼して、外で実験してくる!!」
そう言って王様は飛び出していった。
意外とアグレッシブな王様だな。
ここに来るくらいだもんな、そりゃそうか。
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