第4話 契約します

シロの改造は一瞬だった。

そこには何も変わらないシロが居る。

だが、次の瞬間、嫌そうな顔をした。


「え~と、さっきまでの話は聞いてましたけど……。

 本当に私が外担当なんですか?」

「おおっ! シロが喋った! 見事だ!」

「そうでしょう、そうでしょう」

「主、落ち着いて。そして神様、自慢げにしてないで」

「おおっ! 賢そう!!」

「そうでしょう、そうでしょう」

「あぁ、もう。話が進まない……。

 神様、私が貰ったチートって何ですか?」

「そうでしょう、そうでしょ、ん? 何?」

「私が、貰った、チートって、何ですか?」

「聞いてるから怒らないでよ。

 えっと、まずは家と同等の結界でしょ。それから何でも切れる爪。鑑定能力。それから……」

「あっ、もう良いです。判りましたー」

「ええっ?! 聞いてよ!!」

「結界と爪だけでお腹いっぱいです」

「ええ~~~」


シロと神の会話を微笑ましく観察してしまった。

そんな場合じゃなかった。肝心な事を聞かないと。


「それで、シロに魔素は譲渡出来るのか?」

「あ、はい。可能です。シロさんを抱いていれば譲渡出来ます。

 ただ、シロさんの許容量は20程ですので、1日3回は補充が必要になると思いますね」

「抱けば良いのね。なら問題無いな」

「いやいや、主。一緒に外に出れば良いだけですよ?」

「俺、チートじゃないも~ん。外に出たら死にます~」

「貰えば良いじゃないですか!」

「もう一杯色んなのを貰ったから、無理で~す」

「……今日程、主を憎いと思った日はありません」

「おまっ! そういうけどな。じゃあチート貰って明日から異世界だとしてだ、日本と繋がって無い状態になるんだぞ?

 猫缶じゃなくてカリカリばかりになるぞ? 最後には現地調達だぞ?

 こたつも電気無し。暑くてもクーラーも無しだ」

「魔素の放出、頑張ります!」


シロの同意も得られた。

これで問題は無くなったね。


最終的に神からサインを貰った。

俺はそれに自分のサインとシロの肉球印を押し、コピーして渡した。

お互いに持ってる事が大事だからね。


「これで契約出来ましたね……長かった~」

「俺なんか選ぶからだよ」

「貴方が一番許容量が多いからですよ!」

「主達、不毛な言い争いは止めて下さい」

「おっとそうでした。

 では、明日から異世界です。

 今日寝て起きたら異世界に居ると思いますので、不具合が無いか調べて下さいね」

「不具合があったらどうすんだ?」

「電話してください。0120-0000-0000です。無料で繋がります」


神がフリーダイヤルかよ。N○T、神とも繋げてるのか、凄いな。

いや、ありがたいか。どこと繋げるのか不明だからね。海外よりも高額になりそうだ。


電話番号は忘れそうだと言ったら、名刺をくれた。

神も名刺を使うのか。

なら俺も渡しておこう。

そうだ、近い内にシロも名刺も作ろう。外で活動するなら必要だろう。


「名刺ですか。ありがとうございます。

 へ~、『代表取締役 大矢一馬(おおやかずま)』……代表取締役?!」

「知らなかったのかよ! 知らずに人選すんな!」


こうして翌日、俺は異世界に降り立った。

いや、まだ降り立って無いな。家の中だし。


窓から外を見ると、右手には森、左手には草原が見える。

近くには道らしきものがあり、遠くに何か建造物が見える気がする。

あれが街だとすると、微妙に遠いな。

まぁ俺が行く訳じゃないから良いんだけど。


さて、防犯設備の確認をするとしよう。

監視カメラは……うん、問題無く動いてるな。

赤外線センサーは……通過しないから反応無しだわ。


「ちょっとシロ。赤外線の前を通ってみてくれ」

「は~い」


シロが通過すると、ブザーが鳴った。問題なさそうだな。

でも一つ困った点がある。

赤外線センサーは結界の中になるのだ。

結界を通れないのに、意味無いんじゃないか?

出来れば結界の外に設置したいが……。出るの面倒だな。これで良いとしよう。


最後に家の状態を確認。

電気は来てる。電話は……通じるね。テレビも見れるな。

ネットはどうだ? 最新ニュースを見てみれば判るか。おっ、1分前のニュースが書かれてるな。

後は水道とガス。キッチンで確認したがどちらも問題無し。

良い仕事してますな、神様。


あっ、忘れてた。

金庫を開けると、こっちの世界の通貨らしきものが入ってた。

よしよし。これでこっちの世界で取引も可能だね。


「シロ。確認も終わった。問題は無さそうだ」

「それは良かったです」

「じゃあ俺はいつもの仕事をするから、魔素放出は頼んだぞ!」

「それが一番納得出来ないんですが……判りましたよ」

「とりあえず、遠くに建造物が見えた気がするから、行ってみたらどうだ?」

「そうします」

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