第19話 仕事

「邪な考えは今すぐに放棄してください。

 じゃないと……切り落としますよ?」

「何を?!」

「……フッフッフ」

「シロさんの方が悪い顔と悪そうな笑い方してますけど?!

 判りました! 変な考えは放棄します! ちゃんとお会いします!!」


シロの説得により、ギルドマスターは入る事が出来るようになった。

改心すれば入れるのね。

入った状態で害を及ぼすような事を考えたらどうなるんだろう?

後、気絶状態なら入れる? 意識無いから、危険な考えも出来ないし。

入れたとして、その人が中で目覚めたらどうなる?

強制排除? 気絶する?

誰かで実験してみないとなぁ。


おっと到着したようだ。

出迎えよう。


「ようこそ」

「初めまして。私はギルドマスターのレントと言います」

「改めまして、シャティです」

「ご丁寧に。俺は大矢、いや、カズマです」

「私はシロです」


早速だが、結界の事を聞いておこう。


「先ほど、結界に引っかかったようですね」

「……あれはどういう仕組みなのですか?」

「私やシロ、そして家に被害を及ぼす物や者、被害を及ぼそうと考えている者は入れない結界です」

「つまりは考えているだけでもダメという事……ですか?」

「そうです。先程は何を考えてました?」

「……正直にお話します。

 この結界を街にも張ってもらいたい、と。

 それから、シロさんをうちの専属にして稼いできてもらいたい。

 貴方を冒険者登録し、活躍してもらい、うちのギルドの名を知らしめたい。

 などと考えておりました。ゆ、許してください!!」


あ~、そういう事ね。

ヒドい話に聞こえるけど、トップとしては常識的な話だ。

それくらい考えられないなら、トップに居ない方が良い。

こういうのをバレないように、上手く話を持っていくのがトップの仕事なのだ。


「許すも許さないもありません。

 気にしてませんよ。というか、それが考えられる人がトップなので逆に安心しました」

「ええっ?!」

「シャティさん。綺麗事だけでは、会社は経営出来ませんよ?」

「カズマさん……ありがとうございます」

「まぁまぁ、レントさん。頭を上げて下さい。

 それに私も利用される気が無いですしね……はっはっは」

「うわぁ、知能戦というか、舌戦が繰り広げられそう……」

「主はこういう方です。気にしない方が良いです」


シロとシャティさん、ちょっと失礼じゃないか?

俺はそんなに腹黒じゃないぞ。

ちょっと重要な事を言わなかったり、言質を取って攻め立てるくらいだ。

取引では重要なんだぞ?


「この度は書類仕事を受けて頂けるようで」

「ええ。頑張りますよ」

「しかし、面倒な書類仕事をそんな格安で良いのですか?」

「問題ありませんね。PCに打ち込んでしまえば早いですから」

「PC?」

「あぁ、えっと……機械です。あっ、魔法具とでも言いましょうか」

「おおっ! 凄いですね! それはカズマさんが作られたのですか?」

「……そうですね」


部品を集めて作った自作PCなので、自分で作ったと言っても良いだろ?

結構頑張ったんだから。


「他には何が出来ますか?」

「そうですね~、シロが運搬が出来ます。後は、シロがモンスター退治が出来ます」

「……つまりシロさんが色々出来る、と?」

「そういう事です。その辺は直接シロと話して下さい」

「判りました。……ところで、シロさんのような従魔を増やされる予定は?」

「今の所はありませんが……必要があれば増やすかもしれません」


確かにシロのようなのが多ければ、出来る事は多くなるな。

シロが出掛けている時に、家の防衛を任せられるし。


と言っても、猫を普通に買ってきても、シロのようにはならない。

う~ん、神様を言い負かす必要がある。

これも電話した時だね。


「ちょっと、マスター! そんな先の話よりも今の事を!」

「おっとそうだった。

 シロさんは冒険者として認めます。ランクはBEになりますが良いでしょうか?」

「あっ、問題ありません」

「それでですね。カズマさんも登録出来ますが、どうしますか?」

「そうですね~、しときましょうか?」

「本当ですか?!」

「しかし、冒険者の条件を聞いてからになりますが」


ここはちゃんと聞いておかないとね。

もし強制依頼でもあって、家を出なくちゃいけない事になる可能性があるなら断るし。

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