第20話 冒険者の条件

「冒険者の条件ですね。

 大まかに分けて2通りです。

 討伐や護衛。そして採取や運搬。

 つまり腕力を必要とする仕事か能力を必要とする仕事か、です。

 これはランクでも表しているので、解りやすいと思います」

「そうですね」

「次にランクです。

 依頼を受けなくてもランクが下がる事はありませんし、除籍になる事もありません。

 ただし、ランクを上げるには一定の評価と実績が必要です。

 怠けていたら上がれないのは当然ですからね。

 そして、上がるには試験があります。この場合、上げるランクの方の試験だけです。

 勿論両方上げるのなら、2回試験を受ける必要があります」


この辺はラノベとは違うな。

何もしなければ除籍になるってのが定番のはず。

あぁ、そうする事で、主人公を動かす理由にするのか。


依頼だって、常に可能な依頼がある訳ではないだろう。

依頼が無ければ、依頼を達成する事も出来ない。

それで除籍になると言うならひどい話だ。


「依頼は3種類あります。一般依頼・指名依頼・推薦依頼です。

 一般依頼とはギルドの掲示板に貼られている依頼の事です。

 受付で聞いてもらっても教えてもらえます。

 指名依頼は、受ける冒険者を依頼主が指名します。

 こちらは部外者が受付に行っても教えてもらえません」

「指名依頼に推薦依頼?」

「一般依頼よりも指名される分だけ依頼料は高くなっています。

 推薦依頼も同じです。こちらは一般依頼で出された物をギルドが冒険者に推薦する依頼です。

 これは部外者でも聞く事が出来ますが、評価の低い者には教えません」

「それら断る事は可能ですか?」

「勿論可能です。断ったからといって、評価が下がる事はありません。

 無理をして失敗される方が問題ですから」


そりゃそうだな。

失敗ばかりだと冒険者の信頼が無くなるだけなら良いけど、ギルドの信頼も無くなるよね。


「強制依頼ってのはありますか?」

「……そんなのは聞いた事がありませんねぇ。

 名前の通り、断る事の出来ない依頼ですか?

 まず、そのような依頼はギルドが受けません。

 次にギルドにメリットがありません。その冒険者に逃げられるだけでしょう?

 もし逃げた冒険者が優秀だったらどうします? うちのギルドが困ります!

 そもそも何の為に強制依頼なんか出すんです?」

「え~と、聞いた話では、無茶苦茶強いモンスターが出た時、だったかな?」

「それを倒すのは国軍や領主の私兵の仕事ですよ。

 冒険者が参加するのは止めませんが、ギルドは関与しません」


そういえば、シロや俺に専属になってもらいたい、みたいな事を言ってた。

それで活躍すれば、自分の居るギルドの実績になるからだ。


冒険者ギルドは日本で言う大会社で、各町にあるのは支社って事だとしよう。

支社の実績が大きい方が良いのは当然。

だから優秀な冒険者を囲い込みたい。

なのに強制依頼なんかして、他の支社に逃げられるのは困る。そういう事ね。

それで他の支社の実績が上がったら目も当てられないよなぁ。


ふと思ったんだけど、強制依頼ってどうやって強制してるんだろ?

主人公は受けるからどうでも良いけど、他の冒険者は?

「膨大な違約金を払え」とか「ランクが落ちるぞ」とか「除籍するぞ」って脅す?

それとも受けないなら暗殺される?

受けないと仕事をさせてもらえなくなるとか?


もしそんなのを加入時に説明されたら、絶対に加入しないわ。そんなブラック企業。

その時になってから説明されたなら、受けた振りして逃げる。

クビになる? 上等だ。同じ様なギルドを作って冒険者を引き抜いてやるわ。

どんなに依頼料が高くても必勝の策があっても、強制の時点で受けないね。


「なるほど。判りました。加入しても良いですよ」

「おおっ! そうですか!」

「シロに関しては専属になっても構いません」

「本当ですか?!」

「ええ。ただし条件があります」

「じょ、条件ですか?」

「ええ。私はここから離れられないので、受ける仕事は主に書類仕事だけになるでしょう。

 それでも良ければ」

「離れられない……ですか。理由を伺ってもよろしいですか?」


うっ。

出るのが面倒だから、とは言えないよな。さすがに。

何か良い言い訳をしないと。

………………あっ、面倒。適当で良いか。


「実はこの地には、強大なモンスターが封印されているのです!

 私はその封印を施しているので、離れる事が出来ないのです!!」


ギルドの二人は、マジか?!って顔になった。

シロは、どうした主?って顔になった。

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