第23話 シュウ

あれからしばらくは、何も無い日々が続いた。


シロは冒険者ギルドへ仕事をしに行く。

俺はギルドの書類をスキャナで取り込む。


PCに取り込むと、自動的に翻訳されてるんだよね。

で、そのまま表計算ソフトに表示される。

それを繰り返して、後からゆっくり調べるだけ。


書類が後10枚程度になった時、電話がなった。

表示されてるのは……日本の友人か。


『お~、カズマ。久しぶり! 生きてる?』

「生きてるよ。シュウが電話なんて珍しいな。いつもメールなのに。どうした?」

『いや~、ちょっと困った事になってな』

「困った事?」


何だろうか?

借金でも作ったか?

5万くらいならあげるつもりで貸すけど?


『俺の飼ってる犬、覚えてるか?』

「あぁ、確か柴犬だったな。えっ?! 死んだのか?!」

『生きてるよ! 子供が生まれたんだよ!』

「なんだ、目出度い話じゃないか」

『そうなんだけどさ。問題はここからさ。

 貰ってくれるって言ってた佐藤さんが、急に引っ越す事になってな。

 引越し先はペットNGらしいんだわ』

「急に引っ越すって、何があったんだ?」

『いやいや、ただ単に高齢だから、息子夫婦と住む事になっただけ。

 バリアフリーのマンションを買ったんだってよ。だから断れないって言ってたわ』

「ふ~ん。で? 何となくは判るけど」

『想像通り。犬飼わないか? お前んちデカいじゃん。庭もあるし』


犬ねぇ。俺、猫派なんだけどな。

いや、犬が嫌いって事は無いんだ。

ただあの『構って!』っていう圧迫感が。


おや? 待てよ?


うちに来る

↓↓

シロと同じくチートを貰う

↓↓

賢くなるので圧迫感がなくなる


って流れになる。問題無いか?

というか、ギルドマスターから従魔を増やしませんか?と言われてたぞ。

それでこの流れ。神が操作したんじゃないか?

ならば、貰う一択だな。


「じゃあ飼うよ」

『マジで?! さすが友! ありがとう!』

「お前が礼を言うなんて、気持ち悪いな」

『俺だって礼くらい言うわ! じゃあ今から持っていくな』

「今から?!」

『って言うか、もう近くまで来てる。5分くらいで着くぞ』

「確信犯かよ! あぁ、もう!

 増築したから、裏側に来てくれ! そっちなら駐車場もあるから!」

『一人暮らしなのに、増築したのかよ! ま、行くわ』

「お、おう」


あの野郎、俺が貰う前提で動いてやがった。

断ってたら、多分預かってくれ、って言う流れだったんだろうな。

で、預かってる内に飼いたくなってしまう、ってのを狙ってたと思う。



待つ事、5分。

本当にやってきた。

これは神の作為?なので、日本に戻っても問題無し。

新しい家の方に移動して出迎える。


「マジで新築だな! 前の家は? あぁ、繋がってるのか」

「そういう事」

「無駄金使いがハンパねぇ! その勢いで、この犬にも金を使ってくれ!」

「うるせぇ。で、そのバッグに入ってるのか?」

「おう! 可愛いぞ~!」


バッグから出てきたのは子犬。茶色と白の柴犬だ。

うっ! 確かに可愛い! これを預かってたら、間違いなく飼うって言ってたわ。


「犬は初めてだろうから、エサとかも持って来たから!

 ここに置いとくぞ。じゃあな!」

「もう帰るのかよ!」

「他の家にも持っていくからな。

 今度メシでも行こう……いや、メシでも出前して食おうぜ! じゃあな!」


あっという間に帰って行った。

あいつは俺が出不精でも問題無いって言ってた友達の一人だ。

良いヤツなんだけど、忙しないんだよなぁ。


さ、神様に電話するか。

その前に名前が必要か?

ん~、猫がシロだから、クロでいっか。

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