第8話 シロの回、その4

『シロの回、その4』


「シャティさん、合格ですか?」

「あわ、あわわわ…………」

「シャティさん?」

「は、はい! 何でしょうか、シロ様!」

「シロ、と呼び捨てにして頂いて結構ですよ。

 それで、合格でしょうか?」

「ひゃい! 合格でしゅ!」


どうやら合格だったようで、安心しました。

次の試験は何でしょうね。頑張りますよ。


「シロ様の実力はBランクにします! ……それでよろしいですか?」

「えっと、判らないのでそちらにお任せします」

「あわわ、そう言えば何も説明してませんでした! すみません!」

「いえいえ、こちらが急に来たのですから。

 よろしければ説明をお願いできますか?」

「はい、喜んで!」


どうしたのでしょう? テンションが少し上がってるような。

私がグレードの高い猫缶を前にしたみたいですよ?


「冒険者ギルドにはランクがありまして、F~Sとなってます。

 表記はSSやFFとなってます」

「2つ並べるのはどうしてでしょうか?」

「左側は実力で右側は実績となっています。

 つまりシロ様は初めての登録なので、BFとなります」

「そうですね。まだ何も実績を残していませんからね。当然です」

「理解して頂き、ありがとうございます」

「猫にその様に敬語を使わなくて結構ですよ。名前も呼び捨てにしてください」

「いえいえ! 実力者を呼び捨てなんて失礼な事出来ませんよ!」


そんなものでしょうか?

そう言えば主も年下の方に敬語を使われてましたね。

では間違いでは無いですね。


「しかし、どうして実力と実績を分けるのですか?」

「例えばですね、田舎でずっと周囲のモンスターを討伐してた人が居るとします。

 その人がギルド登録したらFになります。

 それでは実力に見合った仕事が受けられなくなります。不便ですよね?

 それにですね、採取が得意な人がAまで上がったとして、Aランクの討伐依頼を受けるのは危険ですよね?

 そういう問題を解決する為に、分けたらしいです」


なるほど。納得です。

高いけど美味しくない猫缶、高くても美味しい猫缶。

どちらもAランクと言われたら困ります。

前者の場合AF、後者はAAと書かれていれば間違う事はありませんね。

一つの表記に2つ以上を入れるのは無謀を通り越して愚かですね。

表記を増やす。素晴らしい考えです! AAの猫缶が欲しいです!


「理解出来ました。ありがとうございます。

 次の試験は何でしょうか?」

「え~と、普通の登録の場合ですと、採取をしてきてもらうのですが」

「そうですか。判りました。何を採ってきたら良いですか?」

「えっ?! 行かれるのですか?!」

「試験ですよね? 当然行きますよ」

「わ、判りました。ではカウンターに戻りましょうか」


そのまま促されてギルドの受付に戻りました。

訓練場に来られた方達は、切った丸太を見に行かれてます。

その丸太、爪研ぎには向いてないですよ?


「この草を10本採ってきてください」

「はい、判りました」

「え~と、大丈夫ですか?」

「ええ。匂いと形は覚えました。大丈夫です」

「そ、そうですか……」

「期限は何時まででしょうか?」

「明日から三日間ですけど……」

「了解しました。では、採取して来ます」

「あ、はい」


こっそり鑑定を使わせてもらいました。

いえ、覚えているのですが、何に使うのかを知りたくなりまして。

どうやら薬草のようですね。食べるのではなく、加工して使う物のようです。

毛玉を吐くのにも使えるでしょうか?


では、早速採取に行きましょうか。

いえ、その前に家に帰り、主に報告しましょう。

持ってきた猫缶やペットボトルも開けてもらいたいですし。

猫の手では開けられないという事実は残酷でした……。

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