第34話 シロの回。厄介事6

『シロの回。厄介事6』


「あれ、誰ですか?」

「あれは……ラテラウの取り巻きの一人だ。

 犯罪紛いな事も命令があればする、厄介者だな」

「何をボソボソ言っている?! 聞いているのか?!」


バカがうるさいですね。

では言い返してやりましょうか。


「お前がバカの手の者か?! 主に逆らってただで済むと思うなよ!」


真似して言ってやりました。

おっと、顔が真っ赤になって来ましたね。怒っているのでしょう。


「おい、嫌味をいってないでさ。どうするんだよ」

「私にいくつか提案があります。ギルドマスターが選んで下さい」

「お、おう……」

「飛ばす、折る、埋める、潰す、転がす、ヤギを召喚する、凍らす。どれが良いですか?」

「不穏な選択肢しかない! そんなに怒ってるの? もっと穏便なのは無い? ところでヤギって?」

「穏便ですか……では飛ばしましょう。クロ、やってしまいなさい」

「は~い!」

「ちょ! まっ! ……あ~、綺麗に飛んでいったねぇ」


邪魔者は居なくなりました。

では帰りましょうか。

その時、どこからともなく声が聞こえました。


「お、お前達! このままで済むと思うなよ! 取り囲んで食い物も買えなくしてやるからな!」


兵糧攻めというやつですか。

私達が荷物を持っていないから、出来ると思ったのでしょう。

無意味だと思いますけどね。

アイテムボックスに入れれば運べますし、何よりも主が日本で買いますから。

まぁ、好きにすれば良いじゃないですか? 主が許せば、ですが。


クロ先導で、家の門扉まで来ました。

ここからは主の許可を得て来ないと行けませんね。


「クロ、ギルドマスターを護衛しなさい。出来ますか?」

「うん! ガンバルよ!」

「近づいて来た者には遠慮無しに魔法をぶつけてあげなさい」

「わかったー!」


私は一人で家に入ります。


主は……風呂ですか。

あまり近寄りたくないですが、しょうがないですね。


「主。帰りました」

「お~、シロか。一緒に入るか?」

「いえ。別の機会に。それよりもギルドマスターが来ています」

「えっ? マジで?」

「入る許可を頂けますか?」

「いや、良いけどさ。許可?」

「少し主を利用しようと考えているようなので」

「んん? どういう事?」


主に説明をしました。

ピンチになったら助けてもらいたいと思っている事を。


「ん~、それくらい構わないけどな。ただ、俺が許しても結界がどう反応するかは判らないぞ?

 とりあえず実験してみたらどうだ? 通れないなら、その時にまた考えよう」

「判りました。通らせてみます」


戻ると、クロが頑張って威嚇していました。

ヴ~と唸ってるようですが、悪いですけどほのぼのしてしまいますね。


「主と話してきました。通ってみて下さい」

「だ、大丈夫かな?」

「多分」

「た、多分なの?!」

「男なら行きなさい。ほら、早く」

「そ、そういうのってセクハラなんだぞ! って押すな! うわっ!」


ギルドマスターは、ころんだ拍子に通り抜けました。

さすが主。結界も既に自分の物にしているようですね。


「大丈夫でしたね。では行きましょうか」

「釈然としないけど……判ったよ、行くよ」


今なら通れると勘違いして兵が突入してきますが、結界にぶつかっています。

こうやって見ると、結界は通れない者からするとかなり硬いようですね。

鼻血が出ている人が多数います。

あっ、違いました。クロがジャンプして叩いてるだけでした。

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