第33話 シロの回。厄介事5

『シロの回。厄介事5』


「……そうだね。カズマさんなら何か解決策を知っているかも」

「でしょ! じゃあ行こうよ!」

「クロ、待ちなさい。今は入れないでしょう?」

「え~、入れるよ?!」

「私達と同じにしてはいけませんよ」

「何の話ですか?」


説明してませんでしたね。


「今、何処かの兵が主の家を取り囲んでいます。

 多分、この間の貴族の兵だとは思いますが、確証はありませんので」

「取り囲んでる?! マジで?! だ、大丈夫なの?!」

「あの程度でしたら、主の結界を破れる訳がありません」

「ボクたちも出てきたしね!」


それを聞いたギルドマスターは頭を抱えてしまいました。

シャティさんも慌ててますね。


「あのクソ貴族、そこまでやるかよ……」

「どうするんです?!」

「いや、もっとマズい事がある……。ギルドの事だ」

「えっ? 私達に何か関係が?!」

「……考えてみなよ。誰がシロさん達の家を教えた?

 知ってる人間は冒険者以外に居るのか?」

「…………シロ様、誰かに家の場所を教えました?」

「貴方とギルドマスターくらいではないですか?」

「シャティ?」

「私は誰にも喋っていませんよ?! マスターじゃないんですか?!」

「俺も言ってない!」

「じゃ、じゃあ誰が……」

「この間、盗賊を捕まえる為に雇った冒険者が怪しい」

「あっ! 確かにあの人達なら知っています!」


その冒険者が場所を教えたという事ですか。

別に秘密にしている訳ではないので、問題無さそうですけど。

それに森に向かって歩いていたら見えますしね。


「ででででで、でも、マスター! 『鷹の爪』のメンバーは信用出来ますよ?!」

「貴族に脅されたら、言うかもしれないだろ」

「た、確かに……」

「問題は、冒険者ギルドに所属している者が、本人の承諾も無く個人情報をバラした事だ。

 それが脅されてたとしてもだ」


そういうものですか。


「主は気にしないと思いますよ?」

「いや、シロさん。それでも謝らなければ」

「そうですか。では行きますか?」

「行くけど、その前に……」


ギルドマスターは机に向かい、何かを書き始めました。

そしてそれを封筒に入れ、シャティさんに渡しました。


「俺はカズマさんの所に行く。シャティはその手紙を城に送ってくれ」

「ええっ?! 本気ですか?!」

「ああ! 俺は貴族の怒りよりもカズマさんの方が怖い!

 だから王に直訴する! 失敗したらカズマさんに助けてもらう!」

「……情けない事を堂々と言い切りましたね」

「その為にも、カズマさんにはしっかりと謝罪しておく!」

「そんな事考えてたら、また結界に弾かれますよ?」

「……その可能性があったか!! シロさん、お願いしますよ!」


よく判りませんが、主を頼りたいようですね。

ふふん、主の偉大さが判ってきたのでしょう。良い事です。


「判りました。主に話をして、入れるようにしてもらいます」

「ありがとう! ついでに周囲の兵からの攻撃もどうにかしてもらえるかな?」

「それは私とクロが居れば問題ありません。ね、クロ?」

「うん! がんばるよ!」

「シャティさんはどうしますか?」

「えっ? う~ん…………その時はお願いできますか?」

「判りました。主に話します」

「お願いします~! じゃあ早速手紙を送る準備をします!」

「よろしく! じゃあシロさん、クロ君、行こうか!」


いえ、まだ用事が終わってないのですけど。


「クロの登録をお願いします」

「えっ? あっ! そうだったね! じゃあCFって事でどうかな?」

「試験はどうしました?」

「兵の囲みを抜けてきたなら大丈夫でしょ。

 って、シロさんが守りながら来たんじゃないよね?」

「違います。全てクロに任せて来ました」

「じゃあ問題無い! 登録しておくよ、シャティが!」

「はいはい。しておきますよ。給料上げてくださいね?」

「ぐっ! わ、判ったよ……。じゃあ改めて。行きましょうか」

「判りました。クロ、出発しましょう」

「うん!」




「うわ~…………本当に取り囲んでるヨ………………」

「では行きましょうか」

「ほ、本当に大丈夫だよね?」

「ええ。私が貴方の護衛をします。もし襲ってくるならば、クロが相手をしますよ」

「クロ君……よろしくお願いしますね?」

「うん! また飛ばすよ!」

「飛ばす……? まぁ、お願いします」


近づくと、兵達は2手に別れて、道が出来ました。

そのまま進むと、すぐに取り囲まれました。無駄な事をするものですね。

クロが飛ばそうと前に出ると、少し良い装備に見える者が出てきました。

どうやらギルドマスターと何か話があるみたいです。クロを制止しましょう。


「お前がここの者か?! ラテラウ様に逆らってただで済むと思うなよ!」


どこをどう見たら、ギルドマスターが主に見えるのですか?

何を失礼な事を言ってるのでしょうか、このバカは。

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