第6話 シロの回、その2

『シロの回、その2』


街へ向かう道中、ちょっと本気で走ってみた。

うわ、想像以上の速さですね。これは慣れるまで注意が必要です。


おっと、謎の生物が居ます。

地球で言うネズミに似てますね。

主の家では出ませんでしたが、出たら退治するようにと写真を見せられた気がします。

ちょっと爪を使ってみましょうか。


ブン!


あっという間に真っ二つですね。

ちょっと楽しくなってきました。

着くまでに出会ったのは全部倒すようにしましょう。



街に到着しました。

あの後、犬のような生物とブヨブヨの生物に出会いましたが、どれも一撃でした。

楽しくなって寄り道したのは内緒です。


街の入り口は門になってますね。

門番なのか、人が二人立っています。

相手にするのも面倒なので、壁を登って入りましょうか。

いえ、せっかく爪の使い方が判ってきた所です。壁を切ってみましょう。


ブンブン!!


簡単に穴が空きました。

空けた穴は私が入れる程の穴なので、問題無いでしょう。

しかし、この程度の防御で街が守れるのでしょうか?


さて、出掛けに主に言われた事を実行しましょう。

確か「冒険者ギルドへ行け」でしたね。

そして「場所が判らなければ、剣や槍を持った人、つまり冒険者が集まる場所がそれだ」とも言ってました。

屋根の上で監視してれば、簡単に見つかるでしょう。


ぐ~。


おっと! つい昼寝をしてしまいました!

いけませんね、良い日向を見つけるとつい昼寝をしてしまいます。

もう夕方じゃないですか! ヤバいです。主に怒られます。

早く目的の場所を見つけなければ。


あっ、あの集団が冒険者でしょうか?

こっそり付いて行ってみましょう。


ふむ、皆あの建物に入っていきますね。

他の冒険者っぽい人達も次々に入っていきます。

確定のようですね。では私も行くとしましょうか。



私が中に入ると一斉に皆が私を見ました。

猫が珍しいのでしょうか?

えっと、受付はどこでしょうかね?


「おいおい、誰だ。猫なんか連れてきたのは」

「わ~、可愛い~」

「おい、誰かつまみ出せよ」


私を捕まえようとしてきますね。

でもその程度では捕まりませんよ。

風呂に入れようとする主をかいくぐってきた私の実力はなかなかですから。

おや、カウンターに人が居ますね。あれが受付でしょうか。

そちらに行ってみましょう。


「あら、猫ちゃん。こんな所にどうしたの?」

「おいおい、シャティ。猫に話しかけてどうするんだよ」

「シャティさんと言われるのですか。ここは冒険者ギルドですか?」

「「「「「猫が喋ったーーーーーっ!!」」」」」


大騒ぎになりました。

主の落ち着き様を見習って欲しいですね。

神が相手でも一歩も引かなかったくらいですよ。


「シャティさん。ここは、一般的に冒険者ギルドと言われる所ですか?」

「は、は、はい。そうです……」

「お、おい、猫じゃなくて魔物なんじゃねぇか?」

「確かに人語を喋る魔物が居るって聞いた事あるぞ」

「ギルドを潰しに来たのか?!」


後ろから失礼な会話が聞こえてきますね。


「私は魔物ではありません。名前はシロ! 立派な猫です!」

「猫は喋らねぇよ!」

「黒いくせにシロってなんだよ!」

「主に付けて貰った私の名前に何か文句があるのですか?! 主をバカにするなら許しませんよ?!」

「ね、猫さん。落ち着いて。何しに来たのかな?」

「これは失礼しました、シャティさん。こちらには主に言われて、来ました」

「そ、そうなの。どのようなご用件かな? 依頼かな?」

「いえ、冒険者登録してこいと言われまして」

「「「「「えーーーーーーっ?!」」」」」


何か変な事を言ったでしょうか?

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