第75話 ウソor偽り

う~ん、ドラゴンか……。

確かにシロクロなら簡単に倒すだろうね。

実際追い払ったし。


ここから派遣しても良いけど……行かないだろうなぁ。

ちょっと帰るのが遅くなっても、申し訳なさそうにしてるもん。


かと言って、放置するのもなぁ。

知らなきゃ良かったけど、知ってしまった訳だし。

他国の事とはいえ、気にはなる。


「ご主人様~」

「おっ、どうしたクロ?」


悩んでたらクロが足元に来た。

さっきまで玄関の辺に居たのに、戻ってきたのか。


「来てる人達ね~、ウソ言ってるよ?」

「んん?! ちょっと待て!」


慌てて俺は受話器を置く。

流石にこの会話が聞かれるのはマズいだろ。


「クロ、どういう事だ?」

「だからね~、あの人達、ウソ言ってるの!」

「うん、それは聞いた。どうして判るんだ?」

「ん~? なんとなく?」


なんとなく?!

感覚?! 感覚なの?!


「シロ! どういう事か、判るか?!」

「ええ。判りますよ。

 多分ですけど、結界が反応するんですよ」

「結界が?」


そうか!

俺の家に張っている結界と同じのをシロクロは纏っている。

害を与える者や物は入れないという結界だ。

それは相手の心の中まで暴いて反応している。

つまり、その結界の能力を利用すれば、嘘発見器にもなるって事か!

推論だけど。


「なるほど。

 じゃあ、クロ。どの辺がウソだったか判るか?」

「えっとね~、名前以外?」


ほとんどじゃねぇか!

……よし、もう一回確認してみよう。


「クロ、もう一回玄関、いや、門扉の所に行ってくれ。

 で、俺の質問に相手が答えた時、ウソだと思ったら何か合図をしてくれ」

「判った~!!」


クロはしっぽを振りながら走っていった。

……別にそういう遊びじゃないんだが。


俺は再度受話器を取る。


「すみません、切れたみたいで。

 えっと、確認させてもらっても良いですか?」

「はい。どうぞ」

「では。

 そちらに行ったら、破格の対応で迎えてくれるんですよね?」

「勿論です」

「ぶー!」


……クロの声が聞こえた。

「ぶー」って……クイズの回答した訳じゃないんだからね!

まぁ、破格の対応ってのはウソだって事か。


「国が危険な状態なんですよね?」

「はい。そうです。

 ……今も何時ドラゴンが襲ってくるかと、皆恐れております」

「ぶぶー!」


これもウソか。

ところでクロ。「ぶ」が増えたけど、2アウトって意味かな?


「ドラゴンの巣があるんですよね、国の領土の中に」

「はい、そうです」

「ぶぶぶー!」


3アウトね。チェンジってか。


本当だ! ウソばっかりじゃねぇか!


これ、道中に美人さんがモーションかけてくるんだろなぁ。

……それはそれで、一度引っかかってみたい気もするが。

いけないいけない。そんな甘い世界じゃない。

即結婚とかまで行きそうだもん。

残念だが、断ろう。


まぁ、そもそも、家を出る訳無いんだけども。

移動させる方法も知らないしな。


「貴方はウソばかり言ってますね。

 実は結界の前に立っていると、ウソを言っているか判るんですよ。

 ウソを言う人と話は出来ません。お引取り下さい」

「えっ? ウソ?! ちょっと待っ……」


はい、受話器を置きました。

ん? シロ、俺を見上げてどうした?


「主、今日のご飯はカリカリですか?」

「んん? い、いや、猫缶だぞ?」

「……主には結界嘘発見器も効きませんか。

 しかし私には判ります! ウソですね! カリカリでしょう!!」


なぜバレた?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る