第10話 商人
よく考えてみれば、監視カメラで見てみれば良いじゃないか。
こういう時の為にアングルも変えられる良いヤツを設置したんだから。
拡大縮小も勿論、暗視モードや赤外線モードもある高級品だったわ。
カメラで確認すると、やはり結界内に入れないみたいだ。
入ろうとして結界にぶつかっている。
「う~ん、許可の出し方が悪いのかなぁ」
「そうかもしれませんね。私が行って来ましょうか?」
「そうだな。一緒なら入れるかも。頼んだ!」
「任されました!」
シロが駆けていった。
程なく商人の所に到着。
シロと他人の会話って気になるな。
シロはどんな風に話しているんだろうか?
インターホン越しに聞いてみよう。
「こちらへどうぞ」
「ん? うおっ! 猫が喋った?! いや、さっきと同じ様に何処かから誰かが話してるのか?」
「いえ、私が喋ってますよ?」
「猫が?! マジで?!」
「ええ。マジです」
「こ、ここは魔法使いか何かの家なのか?」
「? 違いますよ?」
「違うのか?」
「ええ。違います。
家の周囲に結界が張ってあるから通れないんです。
私と一緒なら通れると思いますので、しっぽを持っていてください。
握りしめたら怒りますからね」
「あ、ああ、判った」
なるほど。接触した状態なら通れるって考えたか。
思った以上に賢くなってるな。
これなら街でも問題無いだろう。
結果、シロに触れていても通る事は出来なかった。
許可したら通れるんじゃなかったのか?
シロは待つように行ってから、こちらに戻ってきた。
「ダメでした」
「うん、見てた。どうなってるんだ? コールセンターに電話した方が良いのか?」
「電話するなら、契約書を出しておいた方が良いのではないでしょうか?」
「そうだな。そうしよう」
う~ん、賢い。
自動で掃除する丸いのに喧嘩を売っていたシロとは思えないな。
金庫から契約書を出して確認してみた。
んん? もしかしてこれか?
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家ごと異世界に行く
1.異世界では家を絶対に防御する結界(?)を張ってもらう。
2.望んだ者や害の無い物しか通過出来ないようにする。
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この『2』に引っかかってる可能性がある。
望んでるのに入れないって事は、害がある人って事になるんじゃないだろうか?
う~ん、どうやって調べたら良いんだ?
「貴方はこちらに害を及ぼそうと考えてますか?」って聞いてもダメだろうし。
それで「はい」なんて言うヤツはいない。
しょうがない。素直に事実だけを言うか。
それが簡単確実だな。
「どうしました?」
「どうも俺達に害がある人物らしい。だから結界を通れないんだと思う」
「そうですか……。どうします? 狩ります?」
「物騒な事言うな! そう話して諦めてもらうよ」
そう言って、インターホンと繋ぐ。
「えっと、この結界は『害のある人』は通れない仕組みなんです。
どうやら貴方はそれに引っかかってるみたいなんですよ。
解除したくても俺では自由に出来ないので。
なので申し訳ないんですけど、入るのは諦めて下さい」
「ええっ?! そんな事ありませんよ?!」
「そう言われても入れない以上、無理なんです」
「周囲にはモンスターが居るんですよ?! 助けてくださいよ!!」
「だから、入れたくても入れないんですってば。
多分、どうやっても入れません。諦めて下さい」
それでも商人は食い下がってくる。
しょうがないなぁ。ここはシロに頼むしかないか。
「シロ。周囲のモンスターを狩ってくる事は出来るか?」
「出来ると思いますよ。街に行く途中でも倒してましたから」
「じゃあ頼むか……うん? 何か航空写真に黄色い点が増えたぞ?」
「他の商人でしょうか?」
「どうだろう? 家を囲むように出てきたんだが」
「くそ! どうしてバレた?!
まぁいい。力押しするだけだ。おい! やっちまうぞ!」
「何か商人が言ってますけど?」
「……どうやら泥棒というか荒くれ者というか、そういう輩だったみたいだ」
「じゃあその周囲に出てきた点は仲間ですか」
「そうだろうな。どうしよう?」
「放っておけば良いんじゃないですか? どうせ通れませんし」
「確かに相手にするのは面倒だ。そうしよう」
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