第46話 シロの回。冒険?2

『シロの回。冒険?2』



「シロさん……本当に大丈夫?」

「大丈夫です。実験済みですから」

「本当に?」

「大丈夫です」

「…………だって、聞いた事無いよ?! アイテムボックスに入るなんて!!」

「問題ありません」

「そもそも! アイテムボックスは生きてる物は入らないはずじゃないの?!」

「誰が言ったんです? そんなウソを。使用者から聞いたのですか?」

「えっ?! ウソなの?! だってそう聞いてるよ?!

 ま、まぁ確かにアイテムボックスを使える人自体少ないから、使える人には出会った事無いけど……」

「私は使えます。そして入れます。何か問題が?」

「ううっ……本当に大丈夫なんだね?」

「ええ」


森に居た狼?で実験しましたから。

彼らに聞いた話では、中では呼吸が出来ないとの事でした。

つまり空気が無いのでしょう。


その辺りの疑問は主にも聞きました。

主曰く、入れた物に変化が無いので空気以外の気体が入っているんだろう。

だから生き物を入れると死んでしまうんじゃないか。

つまり生き物が入れられないのではなく、入れると死んでしまうのでは?、との事。


それを聞いて解決策も考えましたよ。

そして実践して成功したのです。

さ、文句を言わずに袋に入るのです。


「で、この袋に入るんだね?」

「そうです。落下防止です」

「ら、落下?! どういう事?」

「アイテムボックスの中は底が無いらしいですので」

「底が無い?! って事は?!」

「はい。袋が破けると落ちます」

「この袋! 頑丈なの?! 大丈夫?!」

「大丈夫です」


主に貰った袋ですよ?

それに文句を言うとは……。

まぁ、元の世界の物ですから、理解出来ない素材だとは思いますが。


その復路は『トン袋』という物で、工事現場で使う物だそうです。

クレーンで吊ったりするので破れないそうです。

名の通り1tまで入るそうですよ。


「袋の中が獣臭いんだけど……」

「実験でも使いましたからね。そこは我慢してください」

「ううっ……。入ったけど、どうするの?」

「ここをこうします。はい完成ですね」

「……なんか、さらし首みたいになってるけど」


体はすっぽりと入っていて、頭だけ出しています。

そして袋の口にあるヒモを締めたので、丁度台に首だけ乗ってるようにも見えますね。上手い事言いますね。


「……これ、本当に大丈夫だよね?」

「大丈夫です。では入れますよ?」

「ゆ、ゆっくりね! うぉっ! 浮いた?! ひゃあ! んん?! 今どうなってるの?!」

「アイテムボックスに入ってますよ」


袋の取っ手をしっぽで持ったまま、袋をアイテムボックスに収容しただけです。

こうすると、何故か全部入らずに「入りかけ」みたいになるのです。

入った部分は見えなくなるので、現在の状態は取っ手とギルドマスターの頭だけが見えてます。


「うわ~、ギルドマスターの生首だ……」

「ええっ?! シャティ、どういう風に見えてるの?!」

「首だけが見えてます……。不気味です!」

「マジで?! シロさん! 大丈夫なんだよね?! 俺、生きてるよね!!」

「生きてます。シャティさん、叩いてみてはどうですか? 痛さで実感出来るでしょう」

「いや~、不気味過ぎて、触りたくないです」

「ちょっと! 失礼だぞ!」

「質問なんですけど、シロ様がしっぽで持っているその取っ手を離すとどうなるんです?」

「アイテムボックスに吸い込まれます」

「シャティ! 変な話をするな! シロさんの気が削がれるだろ!!

 シロさん、いや、シロ様! 集中してくださいね! お願いします!!」

「問題無いですよ。

 では行きましょうか。方向を指示して下さい」

「わ、判った。まずは北門を出て……」

「北ですね」


街中なので、1分の力で走ります。

人が邪魔なので、屋根の上を走りますか。


「ぐえっ?! うえっ?! むげっ?! ぎょえ~~~~~!!

 シロ様!! ストップ!! ストップでお願いしま~~~~す!!!」

「どうしました? 北門に着きましたけど」

「も、もしかして……この状態で走って王都まで行く、と?」

「そうですよ? 問題が?」

「問題アリです! 無茶苦茶怖いです! 地面が近いし! 速いし! 揺れるし!!」

「そこら辺は慣れて下さい」

「ぇえ~~~~~…………」

「次の方向は? 指示して頂かないと、適当に最速で走りますよ?」

「み、道なりに進んで、村が見えたら右折です。ですので、ゆっくりお願いします…………」


しょうがないですねぇ。では4分くらいの力にしておきましょう。

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