第96話 仕事仲間

佐野が飲み物を飲みつつクロと戯れていると、シロが帰ってきた。


「ただいま帰りました」

「シロちゃ~ん! お帰り~!!」

「おや、アキコさんじゃないですか。お久しぶりです」

「覚えてくれてたんだ! わ~! シロちゃんとお話出来る~!!」

「覚えていますよ。今日はどうしたんですか?」

「シロちゃんに会いに来たんだよ!」


おい。仕事の話だろうが!

全く逆じゃないか!


「元気でしたか?」

「うんうん、元気元気! シロちゃんは冒険者してるんだってね!」

「そうです」

「どんな活躍してきたの?」

「そうですねぇ。あっ、こないだクロと一緒にドラゴンと戦ってきました」

「えっ?! 本当?!」

「本当です」

「ちょっと! 大矢君!

 シロちゃんとクロちゃんに何危険な事をさせてるのよ!」

「俺が悪いのかよ!」

「当たり前じゃない!」

「危険では無いですよ? 逃げられましたが、楽勝でした」

「そうなの? 凄いね~!」


俺に対する態度と、シロクロに対する態度が全然違うんですけどー!

イジメ? イジメなの?


「そうそう、ドラゴン戦の動画がありますよ。見ますか?」

「ほんと?! 見る見る!! ほら、大矢君用意して!」

「はいはい」


逆らうのは得策ではない。

ここはおとなしく指示に従っておこう。


それにしても変わらないな、佐野。

同じ大学の同級生で、経済について勉強した仲だ。


ちなみに、お互い恋や愛なんて関係ではない。

当時、佐野の好きな人を知ってたし、そいつと今でも付き合ってるし。

俺は俺で、好きな人が居た。フラれたけど……。

その後にアニメやゲームにハマり、出不精になったんだよね。


関係を説明するなら、友人であり腐れ縁であり仕事仲間であり、敵でもある。

何故敵なのかと言うと……俺がやってるゲームを必ずプレイするのだ!

そして俺よりも上手い! 対戦ゲームではほぼ負ける!


ちなみに仕事仲間はもう一人居る。

こいつも同級生の男で、腐れ縁だ。

こいつはゲームが凄くヘタ。だけどゲーム好きという不憫なやつ。

さすがの佐野もこいつにはわざと負けてやるほどだ。


ただ、こいつは記憶力が凄い。

2~3回見たり聞いたりすれば、ほぼ覚えてしまう。

だが、それが発揮される事は少ない。

例えばクイズゲーム。判ってるのに間違える。悲しくなるほど、ボタン操作がヘタなのだ。


しかし、仕事では凄く役に立つ!

こいつとコンビを組めば無敵になれる!


そんなやつが何で俺達と一緒に居るのかと言うと……。

誰もが同じくらいの記憶力を持っていると本気で思ってるのだ。

だから『えっ? 何で判らないの?』とバカにしている様に見られてしまう。

俺も最初は腹が立ったなぁ……。


そいつの名前は『伊達』。こいつも来る時が来るんだろうか?

いや、呼んだ方が良いな。

異世界の事を色々覚えてもらおう!

俺も助かるし、伊達も知識が増えて楽しい! WINWINだ!


おっと、上映会は終わったようだ。

ん? もう一回見るのか? いや、良いけどさ。

じゃあ俺は飯の準備でもするかな。


料理(レンチン)してたら電話が鳴った。

もしかして伊達か? 脳内噂の人物じゃね?


「もしもし大矢君? 神様ですけど」


あっ、ヤベぇ。

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