第81話 ハニートラップは?

シロとクロが依頼を全部終わらせたようだ。

どうも色々あったらしいが、王様が機転を利かせて上手く乗り切ったらしい。

詳しくは聞いてないが、またヒマな時に王様が来て話すだろう。


ただ、謎の魔法道具だけが問題。

シロが王からの贈り物と言っていたが、何に使う物か全然判らない。

王様曰く、俺なら判るらしい。無理です。

とりあえず貰い物なので処分も出来ないから、トレーニングルームの片隅に置いておいた。


さて、近況について話しておこう。

ムカツく事が起きてるのだよ。


ほら、どこかの令嬢が来たじゃん。

俺と一緒じゃないと国に帰れないとか言ってた人。

長期戦の構えで、家を建てて住んでるんだけど。


で、隣には魔法使いの家がある。

魔法使いは男。令嬢は女。

そうです。知らない間に恋仲になってました。


いや、良いんだけどね?

俺を誘惑して連れて帰るんじゃなかったっけ?

確かにその魔法使いは優秀な人だけど。

おかしいなー。




少~し、外を見るのが億劫になってきた頃。

また知らない人が訪ねて来た。

この人も結界を通る事が出来ない。

最初から通れる人って居ないのかなぁ。


時間は昼過ぎなので、シロは居ない。俺も仕事中。

って事で、クロが対応に行った。

窓を開けておいたので、声だけは聞こえるんだ。


「こちらが王国を救ったネコの居る家で間違いないか?」

「そうだよー。おじちゃん誰?」


コラコラ、クロよ。

本当におっさんでも、おじちゃんと呼ぶのは止めてあげて。


「私の事はどうでも良い。そのネコを呼んでくれないか?」

「今は居ないよー」

「そうか。では、そのネコの飼い主は?」

「居るよ?」

「呼んでもらえるか?」

「今仕事中! 無理!」

「そうか。まぁ居るならそれで良い。

 邪魔した事を後悔しながら死ね」


は? 死ね?!

誰だ?! しかも邪魔した?

話の流れからすると、王国にデスラットを送り込んだのか?!

って現実逃避してる場合じゃない! 殺しに来るんじゃないのか?!


慌てて窓の外を見ると、そいつと目が合った。

おいおい、おじちゃんじゃないだろ!

額に角が生えてて、髪は青で肌は灰色っぽい。

簡単に言えば人間じゃない!!


そいつはにやりと笑って、俺の方に手のひらを向けてきた。

直感でヤバいと感じた。

次の瞬間、その手のひらから炎が吹き上がった!


……が、結界に阻まれ、自身が炎に巻かれていた。

結界すげー!


「くっ! ここまで強力な結界とはな……。

 だが、これくらいたいした事ではない。

 もっと強力な魔法を打ち込んでやるわ!」


口調は悪役っぽくてカッコイイんだが、まだ服が焼けてますよ。

……ランニングと下着だけが焼け残ってるのが、またダサい。


おっと! ダサい格好だけど、デカい魔法陣を発動させてる!


「ふふふ。この魔法は巨大な岩を空から落とす魔法だ。

 結界で阻んだとしても、爆発して周囲にも被害を及ぼす!」


マジか!

ご近所の魔法使いや令嬢がヤバい!

……一瞬だけ「リア充爆発しろ」とは考えたけど、本当になるのはダメだ!!

どうやって阻止したら良い?!


そんな事を考えてる内に岩が落下してきた。




そして、結界に当たって停止した後、ゴロゴロと裏手に転がって落ちた……。

被害ゼロ。

……魔法がショボいのか、結界が凄いのか。

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