第118話 お決まりのセリフ

結局アレの名前は暫定『イノイチ』になった。

もし枯れたら『ニノイチ』になるだけだが。

暫定ばかり作ってる気がする……。


発表会は1ヶ月後らしいので、それに合わせて発送するつもりだ。

ペンギン宅急便はその辺も対応してくれるのでありがたい。


しかし、今思ったけど、発表会って言うと子供の催し物っぽく聞こえるね。

学校の体育館でやる感じ。

合唱したり演劇したりさ。

あれに向けて練習するのって好きだったな。授業が潰れるから。


ちょっとワクワクしてきたな。

王都が見れるのもあるし、何よりも家に居ながらってのが良い!

快適環境で、旅ができる。しかもVRと言っても現実世界だし!




そんなこんなで、発表会当日になりました。

ちゃんと仕事は休みにしてあるし、電話線も外しておいた。

玄関には鍵もかけたし、スマホもOFFにした。

邪魔が入る余地は無い!


こう言うとフラグみたいだけど、大丈夫。

万が一邪魔が入っても、無視するだけだから。

無視出来ない事態の場合は、普通にVRを止めるだけだ。


今の俺は誰にも止められないぜ!

天変地異くらいじゃないと止まらないぜ!

あっ、もし天変地異が起きたら、神様にクレームの電話するから。

判ってますよね、神様。

そもそも神様が、VR使って魔素を放出してくれって言ってるんだから、邪魔はしないでしょ。

したらただのバカだよ。


既にシロ達は出発している。

今頃はペンギンさんを待っているだろう。

配達時間を分刻みで指定出来るんだから、優秀だよね。


おっと、9時になったか。

ではVRの世界に旅立ちますか!

……今更だけど『異世界に来てVRをする』ってラノベだったら変だよな。

『VRで異世界に行く』ならテンプレだろうけど。



VRを装備すると、シロクロメガが目の前に居た。

おおっ! ちゃんと見えるし、触覚もある!

周囲の音も聞こえるし、独特の匂いもする!

神様の力ってすげーっ!


「ご主人様ー! お決まりのセリフは?」

「おおっ、そうだな。

 では。『VRで遊んでただけなのに、本当に異世界に来てしまった! ログアウト出来ない!!』

 どうだ!」

「バッチリだよ!」

「そうだろうそうだろう!」

「主殿、楽しむのもよろしいですが、そろそろ移動しませんか?

 注目されていますよ?」

「えっ? マジか!

 じゃ、じゃあ移動するか」

「ヒサクさんも来られたので、丁度よいでしょう」


ヒサクさんね。知ってる知ってる。

アレだろ、王都での護衛してくれる人。

護衛が居るのか?という疑問はあるけど、案内役だと思えば。


「こんにちは。自分がシロクロメガの主人のカズマです」

「お待ちしておりました。案内役兼護衛を務めさせていただく、ヒサクと申します」

「ああ、そんなに畏まらなくて良いですよ。

 もっとフランクに行きましょう」

「しかしですね……」

「堅苦しくしてたら、買い食いとかもしにくいじゃないですか。

 あっ、そうだ。丁度良いから、着替えましょうか。服でも買って」

「え、ええ?! 本気ですか?!」

「勿論! ぶっちゃけて言えば、裸でも傷を受ける事はありませんから。

 服装は何でも良いんですよ。はい、決まり! 買いに行きましょう!!」

「は、はぁ……本当に?」

「勿論! ささ、案内してください」

「し、しかしですね。自分は庶民の行くような店しか知りませんよ?!」

「それで良いですよ。 後は……移動しながら考えましょう!」

「ええ~……」


いかん。

異世界ってので、テンションが上がってるな。

だが、異世界の服屋とか興味あるじゃないか。

後は武器屋とか行きたいな。道具屋も良い。

魔法屋とか魔法道具屋とか……夢が膨らむね!!

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