第49話 計算

シロが帰ってきて、とんでもない発言をした。

書類をお城まで持っていった?! 王様に直接渡した?!

街のギルドマスターに渡して帰ってきたんじゃないの?!


「あ、主……私は失敗したのでしょうか……?」


あ、顔に出てたか。シロが不安な顔してる。

しっぽもどんどん低くなっていく。


う~ん、確かに失敗と言えるけど。

でもなぁ、それだけで怒るのもどうかと。

そうだよ、良かった所もある訳じゃないか。総合的に考えよう。


良い点は当然、直接渡してサインを貰ってきた事。

これほど確実な物は無い。人を間に挟めば情報漏洩もありうるし、書き換えや紛失の可能性も。

うん、+100点って事で。


悪い点は、まずギルドマスターを巻き込んだ。

でもシロが同行しろとは言ったが、すると決めたのはマスター。

-10点としておこう。


次にアイテムボックスに入れて運んだ。

これは予想出来た事。俺が袋を買い与えたんだし。

俺の責任でもあるので±0点。


壁に穴。

入る時に騒動になる事を見越して回避したのは良い。

ただ、開けた穴を修復してないのがいけないな。

マスターが残ったらしいから、そこは報告してくれるだろう。

もしかしたら、マスターがこっそり直すかも。

う~ん、-20点。


正規の手続きをせずに直接王の元へ。

これも騒動になる事を考えての行動。

ま、猫が王に会いに来たって言っても通してはくれないだろうな。

王様まで話が行けば判ってくれるだろうけど、行く訳が無い。

そんなのまで王様に通してたら怒られるわ。-20点。


合計で100-50=+50点

……身内に甘いか?

いや! 良かったとしよう! 問題無し!


「よくやったな、シロ!」

「ありがとうございます」


クールっぽく答えたけど、しっぽで丸わかりだぞ。

しっぽがピーンとなってるじゃないか。それ、嬉しい時にいつもなってるぞ。




さて、シロが貰ってきた報酬を確認するか。

1つは……うん、お金だね。

ヤベぇ、見た事の無いコインだ。それが100枚。

安いのか高いのか判らない。

これは、俺が40枚、運んだシロに30枚、取り込み作業をしたクロに30枚、と分配。

で、俺のは金庫に入れておこう。

シロクロはアイテムボックスに入れとけ。


そして本!

これによって、こっちの世界の事が判る!

教科書のような物を集めてもらったんだよね。

貴族や王族なら勉強に必要だからあるだろうと思ってたんだよな。


……問題点は、こっちの文字で書かれてる事。

読めないって!

パソコンに取り込むか? ……面倒だな。

俺が勉強しようと思ってたんだけど、シロクロの勉強用にしようか。

ラノベと一緒に読むように。絶対に相違点があるはずだから。




それから3週間。

今まで通り、俺は家で仕事。シロは冒険者ギルドへ。

クロはギルドの書類を取り込んだり、遊んだり。


そんな事をしてたら、また大量の兵に囲まれた……。

何事だろうか? あの男爵イモが怒って送りつけてきたのか?

何の被害も無いから、無視してるけどさ。


あぁ、1回だけ兵士の中の偉そうな人が叫んでるのは聞いた。

なんかナンタラ伯爵とホニャララ男爵とナニナニ子爵の混合軍だって言ってた。

降伏しろってさ。

シロもクロも、当然俺も知らない人達だ。

一番関係がありそうなのは……シロか。でも知らないって言ってるし。

やっぱり無視だな、無視。

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