第50話 ジャンピング

俺の家を囲んでる兵を無視して2週間。

変化の時が来た。

それは、新たに兵が来たのだ!


増援かよ!と思ったが、どうやら違うようだ。

シロが見た所によると、城で見た旗と同じ模様の入った旗が掲げられてるそうな。

って事は国軍かもしれない。

しかも対峙してるし。


やはり気になるので窓を開けて声を聴く事にした。

防音設備の出来た良い家だが、こういう時は困るね。


「王の命により、武装解除し、降伏したまえ! 今なら恩赦もある!」

「少ない兵力で勝てると思ってるのか?!」

「王直属の兵とはいえ、数で押されりゃ負けるだろ」

「お前らこそ、帰って王に言え! 俺達をちゃんと評価しろってな!」


ふむ。最初に叫んだのが国軍か。

で、後のが囲ってる兵達。


確かに兵力が違うね。

数は判らないけど、見た目で言うと反乱軍(?)の10分の1だな。

ま、この世界は魔法があるので、兵の数=兵力の差とはならないだろうけど。

強力な魔法が打てるなら、歩く戦車のようなものだもんね。


様子を見てると、反乱軍(?)は俺の家を無視して国軍を取り囲み始めた。

まだ火蓋は切られてないが時間の問題にも見える。


どっちが正義っていうのは判らないが、少なくとも囲ってた兵よりも国軍の方に加勢したいね。

どうしようか。よし、聞こう。

拡声器を持ってベランダに出る。


「お~い、加勢しましょうか? 承諾するなら、旗を大きく振って下さい!」


そう言うと、国軍の旗が全て大きく振られた。

加勢して欲しいようだ。

っていうか、最初からそれも検討してたんじゃないかってくらい振ってるね。


「って事だ。シロ、クロ、国軍じゃない方をやっつけて来い!」

「判りました」

「がんばるー!」

「あっ、殺しはダメだぞ。半殺しくらいにしてあげなさいね」


死体なんか見たくない。

まぁ、家から出ないので見る事は無いだろうけど。

倫理観とかで言えば、シロクロに殺人をさせたくない。

半殺しでもその後死亡って可能性はあるが、脅威だと思って貰えれば今後の抑制になれば良いなと思ってる。



シロとクロが飛び出していくと、あっという間に戦線は乱れた。

シロが戦っている所では、皆膝から崩れ落ちる。足を狙ってるのだろうか?

クロが戦っている所は分かりやすく、人間が飛んでいく。

シロクロに向かっていく人達も同じ運命を辿っている。


しばらくすると、今度は逃げ惑うようになった。

そこからは国軍も動き出し、逃げている者達を捕まえて回っている。

家に有ったオペラグラスで見ると、国軍の人の顔が強張っているね……。

シロクロがここまでとは思ってなかったんだろうなぁ。

俺も思ってませんでした。半殺し。ヤバいフレーズだ。今度から4分の1殺しにしようか……。


結果、30分もかからずに、戦争?反乱?は終結した。

そしてシロクロが1人を連れて帰ってきた。


その人は結界を通れたので、危険人物では無いようだ。

そのままリビングに通され、俺と対面。そして、まさかのジャンピング土下座。


「えええっ?! 何事?!」

「うちのバカ貴族がすみませんでしたぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ええ~と、貴方は?」

「私は近衛兵第3師団団長のサルムと申します!

 陛下の命令により、この騒ぎを治めに来ました」

「それはご苦労さまです。さ、立って立って」

「いえ! 陛下からの命もする事が出来ず、カズマ様の手を借りるとは許されない所業!」

「大丈夫だから! 許すから! 問題無し! だから立って!」

「ゆ、許されるのですか?! なんと心の広きお方だ……」


うわっ、面倒くさい人だな。

暑苦しいというか、堅苦しいというか。

とにかく無理矢理にでも立ってもらって、ソファに座ってもらおう。


「王様の命令でバカ貴族を捕まえに来たみたいだけど、これで仕事は終わり?」

「いえ。カズマ様へ謝罪するように、という命も受けています」

「何の謝罪?」

「それについては、こちらの手紙をどうぞ。陛下からです」


手紙は前ほど堅苦しく書いて無くて、簡潔な物だった。

「不正とか嫌がらせしてるウザい貴族を粛清しちゃった。迷惑かけたらゴメンね」

この書き方にはちょっとイラっとしたね。


だが、取り囲んでいた兵の意味は判った。

つまりは俺の渡した会計書類と話をした内容が問題。

それで王が粛清したんだろう。

で、逆恨みで俺の所へ来たって事か。


ゴメンね、で済まされないだろ!

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