第15話 レンチン

「シロ、戻ってきたみたいだぞ」

「そうですか」

「いや、迎えに行けよ」

「私は猫缶を待ちわびているので行きません。主が行ったらどうですか?」

「いやいや、いきなり知らないヤツが出てきたら警戒するだろ?

 だから慣れているシロが行った方が良いって。

 ホラホラ、明日の朝も高級猫缶にしてやるから」

「本当ですね! 聞きましたからね! 行ってきます!」


飛んで出ていったかと思ったら、すぐに連れて帰ってきた。

他の3人は置き去りだ。かまってやれよ。


「帰りました!」

「お前……この人が結界に引っかかる可能性もあっただろ。

 引っ張って来るなんて危ないだろうに」

「大丈夫でしたから大丈夫です!」


猫缶食いたさがハンパない。

もう良いや。食ってろ。

俺が相手するよ。


「こんにちは。俺がシロの飼い主の大矢一馬(おおやかずま)です」

「えっ? あっ! わわわわわ、私はシャティと申します!」

「いきなり窓から入れられて混乱してるのは判ります。

 とりあえず、靴を脱いで貰えますか? 土禁なので」

「へっ?! ああ! すすすす、すみません!!」


う~ん、混乱が収まる感じが無い。

丁度飯時だ。一緒に飯でも食えば落ち着くだろう。


「食事の用意をしますので、リビングまで来て下さい。

 お~い、シロ! シャティさんをリビングに案内して!」

「食べたら行きます!!」

「いえいえいえいえいえいえいえ、そんな食事なんて!!」

「まぁまぁ、腹も満たせば混乱も収まると思いますので、遠慮なさらずに」


案内はシロに頼んだので、台所に行く。

何が良いだろうか? 異世界の人が好む食べ物ってなんだ?

ご飯物はダメだな。箸が使えない可能性がある。

となると、麺かパン。パンは……在庫が無い。

冷食のパスタをレンジすれば良いかな?

カルボナーラなら食べられるだろう。


5分で完成。やっぱり便利だよな。

こんな便利さを捨ててまで異世界に行きたいなんて、ドMだよ。


リビングに行くと、キョロキョロしてるシャティさんが。

横にはシロが座っている。満足そうな顔だ。


あっ、そうか。LEDの電灯だけでも珍しいのかも。

室内は冷暖房完備で暖かいし。

ガラスのテーブルだけでも貴重品になるかもね。


「お待たせしました」

「いえいえいえいえ! ありがとうございます!!

 これは……パスタですか?」

「そうです。冷めない内にどうぞ」


こっちの世界でもパスタって言うのか。

って、今更だけど、何で言葉が通じてるんだろう?

シロはチート貰ってるけど、俺は貰ってないぞ?

そう言えば、俺のステータスってどうなってるんだろうな?

後でシロに見てもらおう。


気づけばシャティさんは完食していた。

物足りなそうだな……俺のもあげよう。


「……これもどうぞ」

「えっ?! 良いんですか?!」

「ええ。まだまだありますので」


俺のはシャティさんに渡し、もう一度台所へ。

在庫のあるパスタは……ペペロンチーノで良いか。


レンチンして戻ったら、既に完食していた……。

食べるの早いな!

あっ! 飲み物を出してなかった!

そうだ、今流行りのフレーバーを出すか。

どこから見ても水なのに、味があるってやつ。

ビックリするだろうな。

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