第28話 シロの回。厄介事2

『シロの回。厄介事2』


私はシャティさんに連れられてギルドマスターの部屋まで来ました。

早く帰りたいのですが。


「マジかぁ……やっちまったかぁ…………」

「どうしましょう……」

「早く帰りたいので、依頼を教えてもらえないでしょうか?」

「いやいや、シロ様! 大事ですよ!」

「何がですか?」

「サーラさん達をボコボコにした事ですよ!!」

「私に害を成そうとしたのでやっただけですが?」


生温かったでしょうか?

それとも足の骨だけというのが問題ですか? 腕も折れと?


「あの人は冒険者をしてますけど、さる貴族の御令嬢なんですよ……」

「猿ですか」

「え~と……人間です。

 とにかく! 貴族令嬢をボコボコにした事が問題なのです!」

「……それで?」

「え? 判りますよね? 偉い人なんですよ?」

「偉いのは父親でしょう? 子供は偉くありませんよ?」

「そうですけど……そうじゃないんですよ」


う~ん、判りません。

偉い人の子供でしょう? 権限も無いですし、次期当主だとしても現当主では無いですから。


「ギルドマスター、説明してあげてくださいよ」

「え~とシロさん。あれの親が問題でね。親バカ過ぎるんだ。

 子供のワガママを何でも聞いちゃうんだよ」

「はぁ。で?」

「今回の事は昨日聞いたよ。シロさんを連れて帰ろうとしたらしいね。

 で、断られたからムキになって、捕獲しようと企んだみたいなんだ。

 それを返り討ち。間違いなく、親が出てくるよ……」

「つまり貴族である親が来るという事ですか」

「そういう事」

「それも返り討ちにすれば良いんですね?」

「どうしてそんな発想になるの?!」


何か変ですか?


「権力を傘にして私を捕縛しようとするのでしょう?

 返り討ちにするのは当然では?

 貴方だってそうするでしょう?」

「いや、方法! 穏便に済ますって事を考えようよ!」

「そもそもですね……」

「なんだい?」

「その貴族とやらは、主よりも偉いのですか?」

「「えっ?」」


主よりも偉いのなら、考えを改めますよ?

主に迷惑がかかりますからね。


「どうなんです?」

「え~と……マスター、どうなんです?」

「…………ヤバいものを封印し続けてるカズマさんと、王国の貴族。

 う~ん、実質的に偉いのはカズマさんという事にはなるだろうけど……」

「では問題ありません」

「いやいやいやいや。そうじゃなくてね?」

「私の所に来たら返り討ちにします。

 ギルドに来た場合は、『政治しろ、娘も再教育しろ』とでも言って下さい。

 そ・れ・よ・り・も、シャティさん、依頼はどうなってるのですか? 帰りたいんですけど?」

「え~と、今日と同じで……」

「判りました。ではまた明日」


ああっ! 暗くなりだしたじゃないですか!

家ではクロが私を待っているのに!

本気のダッシュで家に帰ると、クロは主の仕事を手伝ってました。

偉い弟です。誇りに思いますよ。


一応主には今日の出来事を報告しておきました。


「ふ~ん。貴族ねぇ。階級は何だろ?」

「聞いてません」

「ま、良いか。もし私兵を連れてきてもシロなら倒せるだろ?」

「人数によっては時間がかかるかもしれませんが、問題無いと思います」

「結界もあるしな。あっ、クロのデビュー戦にするか?」

「それも良いですね」

「ボクも戦うよ! がんばる!!」

「ははは。頑張れ! まぁ、そんな事にはならないと思うけどな」


気合が入ってるのか、しっぽがブンブンと振れています。

姉弟で強大な敵と戦う。おっとシャレてしまいましたが、素晴らしいですね。


ところで主、それはフラグというものでは?

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