第57話 大事な機材

ギルドに行っていたシロが早々に帰ってきた。

ギルドマスターを連れて。

何事だろうか? また貴族と問題にでもなったか?


「帰りました」

「おかえり。で、何でギルドマスター?」

「主の許可が必要な案件が出たので」

「許可? まぁいいや。上がってもらって」


「お久しぶりです」

「久しぶりですね~。それで、本日は?」

「実は、シロさんに指名依頼を出したのですよ。

 そうしたら『主の許可が必要』と言われまして」

「どんな依頼なんです?」

「この家の裏にある森、その先にある山の頂上に居るドラゴンを退治して欲しいのです」

「ドラゴン退治?!」

「正確には、薬草が生えている所にドラゴンが居るのです。

 採取したいのですが、ドラゴンが邪魔。なので、追い払ってもらうだけでも良いのです」


ドラゴン! 出たよファンタジー動物!

どうやってあの体重を支えているの? その質量でその翼じゃ飛べないんじゃない?

勝てる人間って居る訳無いじゃん! のドラゴンだ!


そして許可が居る理由が判った。

俺が前に行った事のある内容。

それは、ファンタジー生物を相手にする時は撮影してきて欲しい、というもの。

見たいじゃん、ファンタジー生物!

見に行く気は無いけど。


つまり撮影機器を持ち出すって事だ。

ヘッドセットなんかは、自分では付けられないだろうから許可制にしたんだよね。


「なるほど。

 つまり、薬草採取が目的で、それを邪魔をするドラゴンを追い払って欲しい。

 出来れば討伐して欲しい。

 こういう事ですね」

「その通りです。どうでしょう、許可を頂けますか?」

「そういう事なら許可しましょう」

「おおっ! ありがとうございます!」

「シロ、そういう事だから、頑張って撮影してきてくれ」

「判りました」


撮影機器は2種類用意している。

1つは普通のビデオカメラ。

もう1つはヘッドセット。

全体を映すカメラと、臨場感溢れる映像の取れるヘッドセット。

いやぁ、楽しみだな。


「おっと、その前に。シロ、負けないよな?」

「言われる程強いのですか?」

「多分だけど、世界最強の部類に入るんじゃないか?

 そこの所はどうなんです、ギルドマスター?」

「大体合っていますね。しかし、今回のドラゴンはまだ子供のようですので」

「子供? ではそこまで強く無いと?」

「そうです。しかし恥ずかしながらうちのギルドに所属している冒険者では歯が立ちません。

 シロさん以外は」

「なるほどねぇ……。じゃあクロも同行させよう」

「主、何故ですか?」

「お前が負けるからじゃない。別視点のカメラも欲しいからだ。

 それにドラゴンと戦っている時に、薬草を踏んだらどうする?」

「踏みませんよ?」

「お前は踏まないだろう。だがドラゴンは?

 だから戦ってる間、クロに薬草周辺を守ってもらう」

「がんばるー!」

「ほら、クロもこう言ってるぞ?」

「おねえちゃん、だめ?」

「うっ! 同行を許可します。一緒に行きましょうか」

「うん!」


思わず本音が先に出てしまったが、誤魔化す事が出来たようだ。

これで遠くからの撮影、中距離からの撮影、ヘッドセットでの撮影、3アングルが出来る!

勝ったな!!


「と言う事でギルドマスター。

 シロとクロが向かいます。良いですか?」

「達成してもらえるのであれば、何人で行かれてもOKです。

 ありがとうございます」

「いえいえ。そういうのはシロに言ってやってください」

「ところで、先程から会話に出てくる撮影とかカメラというのは……?」


そういう発言が出るって事は、この世界には無い技術なんだろうな。

どう説明したものか。


「えっとですね。シロの戦闘を見ているように記録出来る物、魔法道具です。

 これを使って、保存する事を撮影と言います。

 撮影する事で後から何度も見る事が出来ます」

「凄い技術ですね! それは市販されるのですか?!」

「いえ、しませんよ。電気、いや、専用の魔力が必要なので」

「そうですか……」


がっかりされた。

何に使うつもりだったんだろうか?

用途次第では貸し出しても良いけどねぇ。

盗撮なら許さんぞ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る