出不精は罪ではありませんよ?
@okosamalunch
第1話 突然すぎます
真っ白な世界。
濃い霧の中ってこんな感じなのだろうか?
さっきまで寝てたハズなのに気づいたらこんな世界に居る。
あっ、そうか。夢だ。
明晰夢って言われてるやつかな? 俺、初めて経験したよ。
しかし、俺の夢なんだからさぁ。可愛い女の子が出るとかゲームの世界の中とか色々あるだろ。
何で霧の中なんだよ。想像したり願ったりしたら変化するのかな?
「あのう……」
ちょっと待ってくれ。今、想像で忙しいんだ。
アイドルのあの娘出てこい! いや、あのアイドルグループ全員来い!
「夢じゃないんですよ?」
最初から人を出すのは難しいのか?
ならゲームとかマンガとかアニメはどうだ?
非日常の方が良いのかな?
「聞いて下さいよ!」
「うぉっ! お前誰だ? お前みたいな天使は願ってないぞ?
いや、確かに可愛いし俺の好みだけど、天使ってのはな~。
俺、擬人化とか全く興味ないんだよね。だから……チェンジで!」
「褒められたのか貶されたのか悩む所ですが……ってそうじゃないんですよ!
これは夢じゃないんです!」
「はぁ? 夢だろ?」
「信じないんですね。じゃあ10秒だけ現実世界に戻します」
そう言って天使は手をサッっと振った。
次の瞬間、俺はベッドの上に立っていた。
「俺、夢遊病の気があるのかな……」
丁度飼っている黒猫が来たので、抱いて撫ぜる。
するとまた白い世界になった。
「どうです? 現実でしょ? 抱いてた猫も一緒に来ましたよ?」
「…………起きてるのに夢見るなんて、脳の病気かなぁ。
病院に行く必要があるか? いや、その前にネットで調べるか」
「信じなさいって!」
「信じろって言う天使が出る夢とか、俺、末期かな?」
「もう! もう! 信じてよ! お願いだから! 助けると思って!」
「助けて欲しいのは俺の方なんだけど?」
「じゃ、じゃあ、仮に! 仮によ!
どうしたら信じてくれる? 天変地異とか?!」
「……俺、破壊願望とかあったのかな?」
「お願いだから! この通り!!」
天使が目の前で土下座してる。
地面が無いから土下座なのかは不明だけど。
さすがにこの状況は焦る!
俺の病気のせいで目の前の天使が土下座。ヤバいな。
とにかく何か言って、この状況を打破しよう。
「じゃあこれから買う株の内、2つを異常に上げてくれ。底値のやつが良いな。
そしたら信じるよ」
「喜んでーっ!」
居酒屋のような声を聞いた後、俺はまたベッドの上に立っていた。
ヤバいよな。近くに大学病院があったはず。
電話をかけようとリビングに行った時、ふと思った。
予知夢ってあるよな。信じてないけど。
もしかしたらソレかもしれない。
そう思ってパソコンを開く。
すぐにいつも使っている株操作の画面が表示されたので、適当に安い株を買う。
それは上がるはずもないメーカーの株ばかりだ。
無駄金だけど、たまにはこういうのも良いだろう。
すると、その内の2つが急上昇!
あっという間に上限に達してしまった。
慌てて売り、すぐにネットのニュースを確認する。
そこには急上昇したメーカーの記事があった。
不思議な事に、新しい物を開発したとか発見したとかも無いのに、株価が上がったと報道されていた。
驚きを抑える為に、猫をまた抱えて撫ぜる。
すると椅子ごと白い世界に居た。
「あの~、信じてもらえましたか?」
「え~と、いや、まだ」
「まだ?! まだ納得出来ませんか?!
判りました! じゃあもっと驚く事をします!
ニュースを見てて下さい! 和解させます!」
はぁ? 誰と誰を?
と言う前に、リビングに戻ってた。
眼の前にはさっきまで見てたニュースのページが。
更新してみると、トップページに「ニュース速報!」の文字が。
クリックして見ると「戦争中のA国とB国が、肩を組んで終戦宣言!」と出ていた。
はぁ? その2国は、俺が生まれる前からずっと戦争してたじゃん!
宗教絡みで、絶対に仲良くならないって言われてるやつ!
それが笑顔で肩組んで写真撮られてる……。
呆然としてると、白い世界に居た。
「……どうですか?」
「……さすがに信じます」
どうやら俺は、本物の天使と会っているらしい。
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