第54話 スキル
結界の事とか魔法の知識の問題があったので、シロとクロは勉強中。
クロには変な知識を入れない様に、この世界の本で勉強させている。
そう、王様から報酬として貰った本の1冊だ。
シロはというと、ま、もう手遅れなので。新しいラノベを読ませている。
ヤギとか呼ばない比較的安全そうなのを。
その中でシロが疑問点を挙げてきた。
俺に言われても知らないよ!って内容を。
「主、質問です」
「ん? なんだ?」
「主や私のステータスにスキルってありますよね」
「あるな」
「スキルってなんですか?」
「えっ?!」
「例えばですね、このラノベでは『裁縫』というスキルがあります。
しかし、村に居る人達でこのスキルを持っている人が居ません。
普通村に暮らしているような人、特に母親ですけど、持っていないとダメではないでしょうか?」
「あぁ、繕い物したりするからだな?」
「そうです。おかしくないですか?」
「え~、それはだなぁ……そうだ! 資格みたいな物なんじゃないか?」
「資格ですか?」
「ほら日本だと、資格試験に合格したら名乗れるだろ、俺は英検1級ですとか」
「なるほど……」
そういう質問はやめてくれないかな。
危険な気がする。
「しかしですね」
「……なんだよ」
「このラノベでは人のスキルを横取りして自分の物に出来るんですよ。
今まで出来ていた事が、スキルが無くなっただけで出来なくなるのはおかしくないですか?」
「……き、記憶から消えるんじゃないかな?」
「それでは、逆に貰った側の説明がつきません。
記憶を貰ったとしても鍛えてなければ出来ないと思うんですけど」
「それはお前も同じだろ?」
「私の場合は改造されているので」
「そうだったな……」
シロもクロも、最初に改造されてたわ。
なら出来るようになってても不思議じゃない。
「そこで主です。
スキルがありますよね。それは鍛えた訳でも無いのに使えますよね。
どうしてですか?」
「それを俺に聞くか? う~ん、予想で良いか?」
「はい」
「1.神様に与えられた物だから使える。
2.実は元々持っていた。
3.その両方。こんな感じか?」
魔素は一番沢山持っていけると選ばれたので、最初からある程度は持っていたのだろう。
日本では使わなかったから出来なかった。
いや違うな。出来る事を知らなかったからしなかったが正解かも。
それを神様が出来るようにしたか、使い方をインストールされた。
こんな所じゃないか?
「しかし、『会話』というスキルは無かったですよね?」
「う~ん、どうだろ? 日本ではステータスなんか見れなかったからなぁ。
待てよ、下地はあったかも。ほら、一応俺って英語は喋れるし」
「なるほど。それを神様がさらに鍛えたと」
「そうじゃないか? この間、新たに入れるのは無理、みたいな事も言ってたし」
「主については納得しました。
しかしやはりスキルを盗られて弱体化するのは納得出来ません」
「何でだよ!」
「例えば『剣術』というスキルがあるとします。
それが無くなっでも、鍛えた筋肉があるじゃないですか。
剣の振り方を忘れても、振るだけの筋肉はある。ならば棍棒のように振り回すだけでも脅威では?」
「『剣術』みたいに『棍棒術』ってのもあるんじゃないかな?!
それが無いから使えない、みたいな?!」
「そんなに細分化するのですか?
だとしたら井戸から水を汲む技術『水汲み』とかあっても良いですよね?
毎日していれば覚えますよね? でも出てきませんよ?」
ラノベを本気で考察してどうすんだよ。
まぁ、それを見て勉強しろって言ったの俺だけどさ!
「……ぶっちゃけて言えばだな!
主人公に必要無いのは書かないだけだよ! 実際にはそういうスキルもあるかもしれないけどね!
それに細分化するなら『呼吸』ってスキルもあるかもしれないだろ!
それ盗ったら簡単に殺せるからつまらない話になるだろ!
無双する主人公でも、苦労するから面白いんだよ! 苦労するストーリーなの!」
「そうですか。判りました。確かにスローライフって言いつつ苦労する話が多いですね」
「そりゃそうだ。そもそも、行く世界を詳しく知らないのにスローライフなんか出来る訳がない。
生活にはお金が必要。お金で苦労しないなら貴族。だが貴族には沢山の義務も付き纏う。
強制が沢山あるならそれはスローライフじゃないだろ。
じゃあお金の必要無い田舎に住むしかない。だがインフラ整備は無し。自分でするしかない。
それに田舎になれば猛獣も出るかもしれない。そうするとチートが無いと死ぬ。
そこで神様にチートを貰う。だが、そのチート能力のせいで注目されてしまう」
「では異世界でスローライフをするなら、どうすれば良いんです?」
「最初に条件を全て整えられた状態の場所に行くしかないね。土地や建物は全て自分の物。
そして人里から離れているのが理想。お金も沢山必要だ。猛獣にも勝てるチートもね。
つまり、快適に生活出来る状態で、最低限の人との関わり、そこで自分の食べるだけの作物を作る。
これなら何とかスローライフが可能じゃないか?」
「なるほどです」
ぶっちゃけた事で、納得してくれたようだ。
「最後に主」
「……なんだよ」
「もし主の人生がラノベになったら、主が一番スローライフしてますね」
確かに悠々自適な生活してるけどさぁ。この世界で何か起きても関係無いようにしてるしな。
でも、メタな発言すんな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます