ヴィラ島沖海戦(九)
空間が弾けた。そうとしか思えないような衝撃の余波が届いてウェリエルの翼を震わせる。
聖なる光、とでも言うのだろうか。目も
身長三メートルはあろうかという巨体、背中には四枚の翼、肩の上に乗るのは左右二つの頭部。双頭のそれぞれが
これが
「
カンナ少尉は自らを奮い立たせるように言い放ち、右手の七・七ミリ魔銃を連射しつつ推力を全開、さらに
瞬間、サリエルが四枚の翼を折り畳み、次いで一杯に展開した。そこから射出された無数の光り輝く羽根が一撃のもとに
「力量差も考えずに突っ込むな、阿呆が」
カンナちゃんを小脇に抱えて射線の外に逃れたサツキ少佐が吐き捨てる、だがその黒い翼には無数の穴が
「くそっ、これじゃボクが弱いみたいじゃないか!」
「ふん、
「悔しくなんかないやい!」
到底私の目では追いつかないそれを天使はいとも簡単に回避、そればかりか手負いの魔女に聖剣を振りかざし肉迫する。力の差は明らか、このままでは危ういと見た私は決断を下した。
「援護します! いくよ、ソロネ!」
「うん!」
もうこの子に頼るしかない。牽制のために放った七・七ミリ魔銃弾は苦もなく
再びサリエルが翼を折り畳み、直後に展開。八方に放たれた純白の羽根が悪魔の身体に弾け、魔女の翼をことごとく撃ち抜いた。
『複数の被弾を確認。
「嘘でしょ!? こんな……」
全方位に向けて無数に放ったうちの数弾が命中しただけでこの損傷、いくら何でも力の差がありすぎる。
見ればサツキ少佐もカンナ少尉も同じような有様だ。ソロネが真の力を解放すれば負けることはないだろうが、こんなところで皇国の切り札と言える力を使って良いものか。いや、そもそも魔力が枯渇している彼女があの姿に変化できるかどうか……
左右の顔に秀麗な微笑を
「回避しろ!」
サツキ少佐の声で我に返り、次いで自分の目を疑った。
「機銃弾!?」
私が思わず言葉に出したのは、それほど意外だったからだ。サリエルの後背から殺意も
「ちっ、無茶なことを」
まったく、とサツキ少佐の
通算撃墜数七十二、これまでに損壊させた搭乗機二十一。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます