ザリュウガク沖航空戦(四)
上空から降り注ぐ魔銃弾はことごとく
だが続いて私の耳に届いたのはかちかちという小さな金属音、ユリエ少尉が握る七・七ミリ魔銃の銃口から微かな光が漏れ、そして消えた。
「
どこか自嘲気味に口元を
「ユリエ少尉!」
落下する
「止血します! どこが痛みますか!?」
「大したことないわ。少し休めば大丈夫よ」
「噓つきは嫌いです!」
「ふふ、嫌われちゃったわね」
自分の首元から
「アイちゃん! やられたの!?」
着水したその魔女を上空から『処理』しようとした天使に威嚇射撃、回避運動を強いる。割り込むように舞い上がった私を取り囲むのは、食事を邪魔された獣のように
『警告、魔力残量七パーセント。省力モードに移行しますか?』
人間であれば「空気が読めない」と言われそうな戦闘用AIの問いに、私は答えなかった。どうする? 二人を守りつつ三機の天使と戦うなんて……
瞬間、右斜め上方から複数の赤い弾列が視界を切り裂いた。思わぬ方向からの被弾に動揺する天使、入れ替わるように現れたのはユリエ隊長とともに対地攻撃を担当していたミクル准尉とヒナタ准尉。
「ミサキ! 隊長は!?」
「ここにいるよ! 援護して!」
この期に及んで震えが止まらない体を𠮟りつけ、残り少ない魔力を惜しみなく消費して、カデクルの上空に群がる天使に向けて魔銃弾を斉射。来るなら来てみろと空を睨みつける。
第六位階
重傷のユリエ少尉と被弾・着水したアイ准尉が収容されたのを見届けて、私は甲板上に座り込んでしまった。すぐに駆けつけた衛生兵に担架に乗せられ、どこかへ運ばれていく。致命的な損傷を
この日行われた『ザリュウガク沖航空戦』におけるマヤ皇国軍の損害は以下の通り。
航空母艦カデクル上部兵装破損、駆逐艦ハナユキ小破。
カデクル航空隊 一式艦上戦闘機六機未帰還。
ナナイケ基地航空隊 四式戦闘機九機、魔女三名未帰還。
死者・行方不明者八七名、負傷者二四二名。
ルルジア連邦軍と天使の先制攻撃を許し多くの損害を出しつつも、虎の子と言える新鋭空母とその戦闘隊が壊滅を
だが航空隊の戦力低下が明らかとなった皇国軍はこの日を境に制空権を失い、地上部隊の前進は完全に停止した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます