ヴィラ島沖海戦(七)
一式艦上戦闘機。マヤ皇国の技術力の粋を尽くして開発されたそれは耐弾性能を犠牲にしてまで軽量化され、軽快な運動性能と長大な航続距離を実現した傑作機とされる一方、紙飛行機のごとき
性能的には一長一短と言えるこの両者が相対した場合、だが結果は一方的なものになる。
決定的に違うのは操縦士の練度。恒常的に天使との空戦を
この日も白灰色の
だがそれでも数的優位を活かし、こちらの爆撃機を妨害するべく接近する機影あり。その数五機。
「三魔戦隊長機より各機。十一時方向下方より接近中の敵戦闘機隊を迎撃する!」
先程までとは全く異なる、ユリエ少尉の厳しい声。『みんなのお姉さん』が『飢えた狼』に変貌したのだと理解した私は、十二番機了解と口の中だけで返答した。
「このくらい、私にだって!」
断続的に放たれた機銃弾の射線を上方に回避。十二名の魔女は大きく散開して敵戦闘機をやり過ごした。
戦闘機との交戦には一応の
だが言うほど簡単なものでもない。主翼に引っ掛けられてしまえば
だが世の中には、それをいとも簡単にこなしてしまう者がいる。
「遅い遅い! ハエが止まっちゃうよ!」
カンナ少尉は漆黒の翼をはためかせて軽やかにそれを回避、
がくんという音とともに速力を低下させる
「ええい!」
ようやく回避運動を終えた私も
「カンナちゃん、深追いはダメよ」
「ちぇ、せっかく
ユリエ少尉の声に下方を見れば、先程の
それよりも私達の任務は味方爆撃機の
「一…………り……魔戦、……ロネ、だい…………中」
その時、
「一魔戦より三魔戦、悪魔ソロネが第五位階天使サリエルと交戦中!」
三魔戦で最も感覚が鋭いコナ准尉が通信を聞き取り、そのまま言い直した内容を理解するまでに数秒の時間が必要だった。クラマに置いてきたはずのソロネがどうして戦場にいるのか? しかもあのサリエルと交戦中だなんて。
私はこの時ようやく自分の
「ミサキ、ソロネを止めて! カンナはミサキを援護!」
「はい!」
「りょーかい!」
条件反射で応答しつつ、ユリエ隊長の指示を頭の中で
それでなくても彼女の力は皇国にとって切り札のようなもので、こんなところで使って良いものではない。力を取り戻したゾギエルが再び本国を襲ったとき、ソロネが万全の状態でなければ対抗のしようがないのだ。
「ボクに任せておきなって。第五位階だろうが何だろうが、ぶっとばしてやるさ!」
「うん……」
翼を畳んで急降下、編隊を離れた私に若き
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