イナ州南岸ニ橋頭保ヲ確保セヨ(四)
同日夕刻、『
マヤ皇国第八艦隊は麾下の揚陸艦を順次接岸させ、続々と地上戦力を上陸させていく。暮れなずむ
「ごめん、ウェリエル……」
目の前の黒猫にしか聞こえないように小さく
ウェリエルは魔力回復と翼部の修復にかなりの時間を要するため、もし出撃となれば予備の
「……」
膝を抱えたまま、一段と強く自分の身体を抱き締める。
今日、私は感情のままに人を
このまま何事もなく時が過ぎてくれれば。
だがそんな都合の良い思いを
「
相方と一瞬だけ視線を交わし、即座に部屋を飛び出して格納庫へ。航空母艦のそれと比べれば十分の一の体積しかない薄暗い庫内、立ち並ぶ幅の広い鉄製の扉が今の私には黒い
私は『13』と大きく表示されている扉の中央、黒い認証部に手をかざした。小さな電子音が鳴り、扉がスライドすると中には漆黒の翼を両側に生やしたランドセル。久々に扱う
十三番収納庫から
「ウェリエル、ちょっと行ってくるね。すぐ帰るから」
隣の『12』と描かれた扉の中には深刻な損傷を負ったウェリエルが翼を休めている。彼女に声を掛けた私はコナ准尉とともにエレベーターに乗り込み飛行甲板へ。一段と冷たくなった風が頬を撫でる中、ユリエ少尉は既に
「
簡潔な説明から即座に意味を理解する。
それはつまり敵艦隊が接近しているか、ザリュウガク城砦の基地航空隊が襲来したのか、あるいはその両方か。もしかすると昼間の戦闘でろくに交戦しなかった天使も合流しているかもしれない。
「了解でーす。十一番機コナ准尉
「十二番機ミサキ准尉
嫌な空だ。既に太陽は鉛色の水平線に沈み、
「ナナイケ基地航空隊の魔女、まさかね……」
私は同期の魔女二人の顔を思い浮かべた。だが卒業以来二年以上も会っていない友人の顔は、少しぼやけて見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます