堕天-フォールダウン(二)
奇怪な森だ。木々は
「ウェリエル、そんな所で何をしている」
「サリエルか。どうにも気が進まぬ、先に行くが良い」
馴染みのある声にも私は振り返ることなく、肩まで届く髪に
「
「
先日この魔の森にて第二位階悪魔バルベルゼの軍勢を打ち破った我々は残党を狩りつつ、その居城の包囲を狭めている。もはや陥落は時間の問題であり焦る必要はないというのに、
呆れた様子のサリエルを見送り、ひときわ
嫌な森だ。木々は八方に枝を伸ばし、
「降りて来い、見えているぞ」
先程から頭上の気配にも、樹上に潜む黒々とした影にも気付いてはいた。サリエルを先に行かせたのは獲物を横取りされぬためだ。
「む……?」
だが樹上で震えるそれは確かに二本の角と黒い羽根を有しているものの、取るに足らぬほど小さな悪魔だった。あまりに小さく弱々しい、こんなものを滅したところで何の足しにもならぬと捨て置こうとした私は、ふと思いとどまった。
「いや……
【
背丈は私の股下にも届かぬほどで、肩の高さに切り揃えられた漆黒の髪と赤味を帯びた目は神の敵対者であることを明らかに示している。私は震えるばかりのこの小さな悪魔を捕らえ、連れ帰った。時間をかけて屈服と同意を刷り込むも良し、面倒になれば
位階の上昇を除いては生まれ落ちた時から姿の変わらぬ
「どれ、これを
どうやら気に入ったのか大きく目を見開き、小さすぎる口でゆっくりと噛み締めるように、楽しむようにやたらと時間をかけてそれを飲み込むと、小さな悪魔はやがて眠ってしまった。
あまりに無防備なその姿。泣き
「まあ良い。十分に成長させてから
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます