イナ州南岸ニ橋頭保ヲ確保セヨ(十)
大航海時代の武装商船ではあるまいし、
艦橋にいるであろう艦長はこれを知ってか知らずか、皇国第八艦隊に向けて主砲を撃ち放した。間近で轟いた爆音に耳を塞ぎかけたが、これは
「武装を
『武装を
自らの足で軽く跳躍すると同時に翼に風を
どずんとしか表記できないような重々しい音を立てつつ数トンの鉄塊が落下して甲板まで転がり落ち、私に
「コナちゃん、退避!」
「たまにすんごい無茶するよね、あんた!」
二人の魔女は舷側から飛び出し、海面に
「暴発したらやばかったんじゃない、これ」
「ごめん!」
溶断された砲身から砲弾が飛び出したから良かったものの、その場で暴発していたら艦も私達も道連れだったかもしれない。でもこんな全長一〇〇メートルを超える巨体を止める
ともかく機銃二基を制圧、前部主砲は大破炎上。もはやこの
などと私はやや楽観したものだが、それは見通しが甘かったと言わざるを得ない。がくんとばかりに起こった足元からの衝撃に耐えかねて数歩たたらを踏み、
頭の中が揺れるような違和感。左右に広がる暗い海を見渡してようやく事態に気づいた、この
「
でもその目的は何だろう、翼ある魔女を道連れにしようとした訳でもあるまいし。そう考えたとき、がこんという何かが開くような音が耳に届いた。その正体は……
「コナちゃん! 魚雷!」
連装魔銃を掴み直し、
「しまった……!」
夜の海に飛び込んだ魚雷は三本の傷跡を残して海面付近を疾走、それを追って低空を
だがこの暗さでは視認が難しく、爆破した際の余波を考慮に入れてある程度の高度をとらなければ自身に危険が及ぶ。さらにはこの手に多くの人命が懸かっているという重圧が掌に汗を
「ええい! どうだ! これでっ!」
結局は直上から弾をばら撒くようにして乱射、幸いにもいくつか直撃弾があったようで二本の巨大な水柱が上がった。
だがその
「ミサキ、どいて」
瞬間、上空一〇〇メートルから海面に向けて垂直に赤い光の線が
揚陸艦の直前で派手に上がる水柱。上陸作業中の将兵から驚愕の声が上がる中、耳元のスピーカーからは小さな溜息が聞こえた。三魔戦随一の
この日行われたスルガ海峡海戦における両軍の損害は以下の通り。
ルルジア連邦側はハリコフ級巡洋艦小破一、クロプヌイ級駆逐艦中破一、小破二、イナ州南岸地帯砲台群を喪失。戦死および行方不明者五七〇名。
マヤ皇国側は巡洋艦ヨウテイ小破、駆逐艦キリサメ中破、イセ型揚陸艦沈没一、一式艦上戦闘機三、四式戦闘機八。戦死および行方不明者一九一名。
異例とも言える夜間の空戦は天使、魔女ともに数機が損傷を
かくして皇国軍はイナ州南岸地帯に橋頭保を確保し、『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます