第21話
相変わらず授業は退屈だけど、内容が期末テスト対策なので授業を受けようって気にはなっている。
飯館さんもしっかり授業を聞いているみたい。飯館さん以外の陽キャグループの4人
嶋村もたしか3年生に上がれず中退だったはず。瀬長はこの秋口に闇バイトに手を出して逮捕され、そのまま消えたと思う。鈴木はなんとか3年には上がったけど卒業まで学校にいたかは定かじゃない。
もうこう振り返ってみると陽キャと言うよりも飯館さんのグループは一般的に言うところの不良グループってやつなのかもしれない。
当然、他にも陽キャって呼ばれるような連中はいるけど、そっちはスポーツ系だったりパーティー系だったりで成績は良くないかもしれないが一応勉強はしているみたいだし。
そういった連中は飯館さんのグループとは一線を画している感じがしている。
一周目は完璧なる陰キャだった僕から見ると、陽キャは全部一括りで同じものに見えていた。陽キャと陰キャの間に地味キャなるものがいる、程度の認識だった。
生徒目/陽キャ科/不良属みたいに分類階層が出来たりして。生物の授業でやったな。
今飯館さんは不良属からの脱却をしようとしているってことだな。これはちょっと気合入れないといけないのかもしれない。
この僕の危惧は早々に実現することになった。
「飯館先輩来ないですね」
「おかしいな。僕よりも先に教室を出たはずなんだけどなぁ」
勉強会を始めて3日。今日も図書準備室に集合することになっている。花楓と僕はすでに準備を完了させ、花楓に中3の数学を教えているところ。
「せんぱいに何も連絡きていないんですか? 飯館先輩とは付合い短いですけど無断でぶっちするような人には見えなかったんですけど」
「連絡は――ないな。メッセージは入っていないよ」
この勉強会が始まってから3人でメッセージグループを作った。もちろんL○neではなく、wire-upのほうにだ。
「変ですね」
「うん。ちょっと教室をもう一回見てくるよ。花楓はこのドリルをやっていて」
なんとなく胸騒ぎがする。過去には無かった事態なので今どういう状況なのかさっぱりわからないが、なんとなく良くないことが起きている気がする。
教室まで戻るとそこには爽やかスポーツ系陽キャの敷島が女の子3人と放課後勉強会をしているところだった。イケメンが女の子を侍らせて勉強会なんて――イケメンじゃないが僕も可愛い女の子二人と密室で勉強会しているな……。
いやいや。今はそんなのはどうでもいい。
「敷島くん、勉強中ごめん。飯館さんのこと見なかった?」
「あ、えっと。狩野だっけ?」
「ううん。佐野だよ。で、飯館さんのこと知ってる?」
「いや知らないな。飯館は教室にいなかったぞ。いつもつるんでる遠藤とか嶋村は体育館がどうのこうの言ってたけど」
体育館?
部活もやっていないから無人だと思うけど……。もしかして⁉
「ありがとう。ほかを当たってみるよ」
「ねぇいずみん。最近あたしらに冷たくなーい?」
「そだよね。ホームルーム終わったらちゃちゃっといなくなちゃうしぃ。ウチらさみしなぁ~」
「茜、友紀。あのね、わたしも少しは勉強しないと先々悪くなる一方じゃない? 2年生にはなれたけどこのままじゃ3年生に上がれないよ」
そっと体育館の中に足を踏み入れると倉庫の方から声がする。遠藤、嶋村。そして飯館さんの声のようだ。
「いずみんは心配性だねぇ~ 担任にはお尻をちょっと触らせれば反省文も免除してくれるし、学年主任の酒井田には胸を揉ませればおっけーだよ」
「やーだー。茜ってば酒井田にそんなことしてるの? キモくない? あはは」
「わたしはそんな一時しのぎみたいなことはしたくないの。ちゃんとしたいの!」
バレないように足音を消してゆっくりと倉庫に向かう。倉庫が遠い。
「なに? 和泉はウチら一時しのぎで先がないとでもいいたいわけ?」
「友紀……。わたし、そういう事が言いたいんじゃなくて――」
「ごちゃごちゃお前ら煩いわ。和泉は俺らの仲間だよな? 抜けねえよな? それならそれでいいじゃん」
「だよな。この前会った大輝の知り合いって人たちも仕事あるから女をもっと連れてこいって言ってたじゃん。和泉も今度は来いよな」
倉庫の扉の前で足が止まった。瀬長と鈴木もいるみたいだ。
瀬長と鈴木の口調がもう脅し口調になっている。この二人は本当に友だちなのか?
僕はスマホを素早く操作して、念のため録音の状態にもセットした。
「わたしは行かない。絶対に行かないし、みんなもその人達とは関わり合いにならないほうがいいと思う」
「うるさい。お前に指図される筋合いはない」
「っつーことは、和泉は俺らのグループから抜けるってことでいいんだよな?」
「そ、そういうことね」
「なら、何やられても文句はねえよな? おい鈴木、こいつヤッちまおうぜ」
「前からお高く止まってたから気に入らなかったが、最後にヤれるなら許してやってもいいかな? へへへ」
「ウチらが動画撮っておいてあげるよ! 茜はそっちから撮りなよ」
「おっけー」
「やめて! いやぁー!」
拙い! 四の五の言っている場合じゃない! 僕は倉庫の陰から飛び出した。
※
楽しかった! 面白い! 続きが読みたいと思っていただけましたらぜひとも♥や★をよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます