第33話
予約投稿するの忘れていました。すみません(汗)
※
水曜日のアルバイトを無難に
和泉の家にお邪魔することになっている。女の子の家に行くのは初めてなので要領を得ないんだけど、手土産にうちの近所にあるパティスリーのちょっとした焼き菓子のセットを持っていくことにする。
僕は夏休み初日からの二日間でほぼ出されていた課題は片付けてしまったので残りは、小論文と英語で書く日記。あとは、なぜか先生のノリだけで出されたような美術の作品提出だけだ。
美術の作品っていうのは絵でも写真でも造作でもなんでもアートならいいっていうんだけど、僕にはそっち系の才覚がないようなので、実は一番の難題だったりする。
待ち合わせは駅。僕が一番乗りだったみたいだ。
「おはようございます。せんぱい」
「おはよう、花楓。早いね」
「せんぱいのほうが早いじゃないですか?」
「まあ、そうなんだけどね。大して変わらないじゃない?」
「ですねー」
他愛もない会話。一周目にはなかったものなので、そんなことをふと思うと感慨深くなる。
「……はよ……ふわぁ~」
「おはよう、和泉。やけに眠そうだね。長く寝られるんじゃなかったのかい?」
確か誘われたときにそんなことを和泉が言っていた気がする。
「部屋の掃除とか出迎えとか考えたらぜんぜんゆっくりなんてできなかったぁ~‼ 私が浅はかだったぁぁふわぁ~」
大あくびをする和泉。なんとなく気づいていたけど、彼女ってかなり残念美人さんだよな。
駅から歩くこと10分ほど。どこにでもあるような普通の住宅街にたどり着く。
「あまり期待しないでね。わたしの家だからと言って豪邸じゃないから。ただの建売住宅だからね?」
「誰も豪邸なんて想像もしていないから大丈夫だよ」
たどり着いた和泉の家は僕の家ともさして変わりのない一般住宅ってやつだった
「私の部屋は2階だけど、もう一回確認してくるから待っててね」
そう言って和泉は僕と花楓をリビングに置いてドタドタと階段を駆け登っていく。
「先輩ってけっこう抜けてますよね?」
「まあ、否めないね」
「おっけー! 二人共上がってきてよ~」
二人であまり広くない階段を上がっていく。今日は、和泉のご両親ともにお仕事もしくは外出中らしく、見かけることはなかった。
一周目では和泉の素行のせいでご両親の離婚にまで発展してしまったんだよな。それに、お母さんは……。止めよう。今回はそんなことにはならないんだ。
初の女子部屋ということでやや上気気味なのだけど、隣に花楓がいるのでバレないように冷静を装う。
「お、おじゃまします……」
「どうぞ、適当に座っってちょうだい」
部屋はごく一般的と思われる白い壁紙に覆われていた。意外にも質素で、パイプフレームのピンク色した可愛らしいベッド以外はこれといって特徴もなかった。
「先輩のお部屋って思ったよりも地味ですね」
「悪かったわね。素行と一緒で部屋も派手だとでも思ったのかしら?」
机の上が、勉強道具ではなく化粧品やファッション誌でいっぱいなのを除けは拍子抜けと言ってもいいくらいに地味で普通な部屋だった。
緊張して損した気分。
「はい、これ僕からのおみやげ。うちの近くで売っているクッキーね。けっこう美味しいよ」
「ありがとー。クッキー大好きだよ」
「せんぱいはクッキーなんですね……。私は、近所にある和菓子屋さんのお団子なんです……」
「え~わたし、お団子も大好きっ! カエデちゃんありがとー」
いきなり団子を食べようとする和泉を止めて、勉強会を始めることにする。
「お団子食べたかったな……」
「まだ言ってる。あれはおやつの時間に頂こうよ。今は先ず宿題を片付けるのが先決だよ」
「へーい」
「なんだか和泉先輩はせーしろーせんぱいの妹みたいですねぇ~」
僕と和泉のやり取りを横で見ていた花楓がぼそっと言った。
「そんなことないよぉ~ 誠志郎くんとは誕生日一緒だからまったくの同い年なんだから!」
まあそうだね。偶然にも誕生日が一緒なんだよなぁ。あれ?
「僕、和泉に誕生日って教えたっけ?」
「あーあ、あれ、あれだよ……。そう。履歴書。誠志郎くんがバイトの面接に行く日にちらっと履歴書が見えたんだ。そ、それでね。一緒だなって」
「え? カバンの中身開けたの?」
「ち、違うよ。カバンが倒れて、履歴書がちらっと……ね」
確かにカバンを倒して中身をぶちまけた記憶はあるけど、その時だったけな? まぁ誕生日ぐらい知られたからって目くじら立てるようなもんでもないけどね。
「へ~すごいですね。運命の出会いって感じですか?」
「違うだろ?」
「えへへ、そうかな?」
「「えっ?」」
なに? 運命の出会いを肯定してしまうんだ。ということは和泉ってもしかして僕のこと……。さすがにそれはないか? 陰キャあるあるの勘違いだな。
「あっ、そうだ。せんぱい、この問題の解き方がさっきからわからないんですけど、いいですか?」
「お、おう。それは、えっと。教科書の……この公式。これを使ってみて」
なんだか変な雰囲気になりそうだったけど、花楓の質問でうまいこと誤魔化せたかもしれない。
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