第30話
「いーなぁ、い~なぁ。カエデちゃんはいいなぁ。あんなにカッコかわいい水着を選んでもらえていいなぁ。ダメージ箇所がエロいのもいい」
最後に和泉の水着選びになったのだけど、これがなかなか決まらない。
最初に水着が決まった瑞希などはもう疲れてしまったようなので、同じく決まっている花楓と近くのベンチでまったりと休憩タイムを取ってもらっている。
「さっきのだって花柄のビキニだったじゃないか? あれじゃなんで駄目なんだよ?」
「だって可愛いけど、大人っぽくなかったしぃ」
可愛いならいいんじゃないかと思うのだけど、和泉に言わせれば子供っぽいと言うんだよな。まだ高校生なんだし多少子供っぽくてもいいじゃないと思うんだけどな。
「誠志郎くんが目を離せなくなるようなエロティックなやつがいいの!」
「エロいとか公の場所で大きな声で言わないでよっ」
そもそも水着でエロいのってなんだよ⁉ 水着というだけで僕なんかエロく感じてしまうって言うのにさ。
今日は何回も試着確認を繰り返したので目が慣れたということはあるけれど、完全に慣れることはないと思う。花楓もプロポーションはいいけど、和泉だってかなりグッと来るプロポーションをお持ちだ。さっきの試着した水着だってだいぶ僕からしたらエロかったけどな。
ビキニが陳列された場所は2周ぐらいした。いっそのこと他のカタチのやつで和泉の気にいるものはないかと足を向けてみる。
「モノキニ、ねぇ」
ワンピースとビキニの間の子みたいな感じだった。背中から見るとビキニなんだけど、お腹のほうはワンピースみたいに布に覆われている。
「あ、れ。これは? いいんじゃないかな?」
なんとなく和泉のお眼鏡に叶うような気がして、その水着を手に和泉のもとに戻る。
「和泉。これなんかどうだろ? モノキニだけど、お腹の部分が布じゃなくて紐で編んだ網状なんだよ。紐なビキニっぽくて和泉に似合ってセクシーなんじゃないかな?」
これで決めてほしくて一周目を含め生涯口にしたことのないセクシーなんて言葉を吐きながら頑張ってプレゼンしてみる。鮫島商事の鬼頭(クソ)専務にプレゼンするよりも緊張したぞ。
「あっ、そう、これよっ、これ! 私が求めていたのはこういうのだったのよ。さすが誠志郎くん。すぐに試着してみるね」
すぐに和泉は試着室に入っていったのでその前で着替えが終わるのを待つ。もう何度もこの試着室の前で待ったのでもう照れなんてない。今はたださっきの水着を和泉が気に入ってくれることを祈るだけだ。
「お、おまたせ……。ちょっと、思いの外、えっちーくて恥ずかしいけど……見てくれる?」
「も、もちろん」
カーテンの隙間から顔だけ出して和泉が問いかけてくるのに答える。
「じゃあ、こんなんです。じゃーん‼ ど、どうかな?」
「おふ………最高です」
試着室のカーテンを開けるとそこには女神がいた。神々しいくらいにエロかわいい。
つーっと鼻から熱いものが流れてくるのを感じる。
「せ、誠志郎くん! 鼻血出てるよ。ほら、ティッシュ、ティッシュ!」
疲れていたのか、最後に決まってホッとしたからなのか僕が鼻血を出すというトラブルがあったけど無事全員の水着が決まった。
因みにだけど僕の水着はサーフパンツってことで一瞬にて決まったので説明は割愛させていただきます。
ファッションビルを後にする頃にはもう夕方だった。夏なのでまだ日が高いから暗くはなっていないけど、夕方なのは間違いない。何時間水着選びをしていたんだよ……。
「お兄ちゃん、お腹すいたよ」
「だな。僕も小腹がすいたよ」
「マッコってく?」
「私、女子とマッコ行くの初めてです」
マッコに行くのは決定のようだ。ポテトとシェイクにしようかな。暑いし。
「なに、カエデちゃんは男子とは行ったことあるような言い方じゃない?」
「あ、せんぱいに部活帰り、連れて行ってもらいました」
「は? 誠志郎くん、いつの間にやら放課後デート決め込んでいるのかしら。わたしも誘ってよ」
その頃は和泉とは話をしたこともないし、あのマッコでカッコつけて奢ってからだいぶお財布が参ったし。
「いいっじゃないか。今から行けるんだしさ」
「ん~今度は二人きりで誘いなさいよね?」
何故に二人でマッコに行かなければならないんだね? よくわかんないなぁ。
「私お兄ちゃんとロイキャ行ってパフェ食べたんだよ!」
「そっかぁ。優しいお兄ちゃんで良かったね!」
無理矢理に話に加わってくる瑞希がほっこり可愛い。今度はマッコにも二人でいこうな!
「いいですねぇ。お兄ちゃんが優しくて。うちのお兄ちゃんなんてどこにも連れて行ってくれないですもの。せんぱいがお兄ちゃんなら良かったのに」
「花楓ちゃん駄目だよ。お兄ちゃんはウチのお兄ちゃんだからね。あげないよっ」
そういって僕の腕にしがみつく瑞希。
「あ、いいなぁ~私もせーしろーおにいーちゃんって言ってみたい」
反対の腕にしがみつく花楓。肘のあたりが柔らかな物体に挟まれて幸せです。
「ああっ! 二人共ズルい。わたしもっ」
背中に和泉が抱きついてくる。三方が幸せ過ぎる。タイムリープバンザイ! などと言っている場合ではない。さすがの27歳の僕もこれにはキャパオーバー。
「ちょっ、ちょっ! 人前で何やっているんだよっ、離れて!」
周囲の、特に男性の視線が冷たくて鋭くて僕は居た堪れなかったよ。
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