第37話

「疲れた……」


 一日バイトで駆けずり回るよりも女子3人相手に遊ぶ方が疲れるなんて初めて得た知見だよ。もう、クタクタ。


 流れるプールを果たして何周したことか。代わる代わる僕にちょっかいを出してきてははしゃぐ彼女ら。

 僕だって楽しくないわけないので思っきり楽しんだわけで。この疲労は自業自得ってやつなんだろうな。


「楽しかったね~」

「とても楽しかったです。誘ってくれてありがとうございます」

「お姉ちゃんたちありがとうね!」


 女子3人はまだまだ元気なようで、このあとファミレスに寄ってパフェを頼むのだとか。


 明日のバイトもあるから、僕は早く帰りたいところだけど瑞希を置いて帰るわけにもいかずお付き合いは継続。

 お昼のホットスナックみたいな食事じゃ物足りなかったので、ファミレスではしっかりご飯物を僕は頼むことにしよう。


「誠志郎くんは初の女の子とのプールはどうだったかな? だいぶ楽しんでくれてはいたようだけど⁉」


「正直楽しかった。女の子云々のまえに友だちと一緒にプールなんて来たのは小学校の低学年の頃以来だと思うんだよね」


 小学校の頃は、特に低学年の頃は今ほど陰キャじゃなかったからね。あまり思い返すと悲しくなりそうだからこの辺にしておくけど。


「せんぱいはまた私とプールに来たいですか?」


「そうだね。最近思ったけど、こうやってみんなで遊ぶのってすごく楽しいことなんだなってわかったよ。花楓もそんな感じじゃないか?」


「そういうこと聞いたのではないのですが。まあ、ずっと一人だったのでまだ慣れないですけど、楽しいです」


「お兄ちゃん、今度は私と二人でプール行こうね。近くの町民プールでいいから」


「おっけ。あそこなら自転車で行けるし、町民なら大人でも300円で入れるもんな」


 僕たちの住んでいる町にもプールがある。今日行ったプールの半分ほどの規模だけど、水遊びするくらいには丁度いい。


「おまたせいたしました。ハンバーグアンドエビフライセットのお客さまは?」

「はい、僕です。ありがとうございます」


 僕が頼んだのはハンバーグとエビフライのセットにご飯大盛り。夕飯が食べれらなくなるって? そんなことはないよ。ここ1週間だけだけど、おやつにおにぎり2つとか食べているんだよね。もういくら食べてもお腹が空いてしょうがないんだ。


 筋トレしてバイトで身体動かして、勉強もしっかりやってエネルギーが足りないんだろうね。1日5回食べる日もあったりする。


「せんぱいが筋肉ムキムキとか似合わなすぎておかしいですよ!」

「そうかなぁ、わたし的には誠志郎くんのマッチョはいいと思うけど!」

「まあまあ二人とも落ち着いてよ」


 マッチョは無理だろうけど、せめてタコ殴りを回避できるくらいには体力と筋力をつけたいと思っているだけだから。未だにあれを気にしているのもなんだけど。


「おまたせいたしました。ストロベリーパフェにチョコレートサンデー、白玉抹茶パフェです」


 和泉がストロベリーパフェで、瑞希は少し量の少ないチョコレートサンデー。花楓は渋く白玉抹茶パフェを頼んでいた。


 なんだか眼の前で食べられると、僕まで食べたくなるから不思議なもんだよね。


「はい、誠志郎くん。あーんして」


「え?」


「ほら、冷たくて甘くて美味しいよ? あーん」


「あ、ズルいです。私の抹茶アイスも美味しいですよ! あーんしてください、せんぱい」


「お兄ちゃん、ごめん。ウチのはあげないよ。ただでさえ少ないんだからお兄ちゃんにあげているよゆーはないからね⁉」


「いや、いらないから。二人もスプーンを下げて?」


「「あーん」」


 溶けてスプーンから垂れ落ちそうになっているので、仕方なく二人のスプーンから一口ずつ頂いた。味? そんなものわかんなかったよ。





 夕飯もしっかり食べて、ソファーでのんびりしながらテレビを眺めている。どこのチャンネルも似たようなバラエティー番組で面白くない。


 某公共放送のチャンネルに変えてニュースでも見ることにする。CMがうるさくなくてまだマシだからね。


 闇バイトと強盗のニュースが毎日流れているので、こちらも代わり映えしない。それにしても、この闇バイトってやつの黒幕は和泉が言っていた例の半グレ集団とも関係があるんだろうか?


 そういえばもしも順当に歴史が繰り返していたなら、瀬長真人は再来月の中旬ころ闇バイトで捕まって退学だったはずなんだよな。なんとなくそこは繋がっている気がするな。


「お兄ちゃんもお風呂入りな……。ふわぁ~ウチ、今日はすごく眠いからもう寝るね。明日もラジオ体操だから寝坊しないでよ」


「はいはい、おやすみ。ラジオ体操の前には起こしに来てくれるんだろ? 早く寝てしっかり身体を休ませるんだぞ?」


 このラジオ体操に僕も付合いで一緒に出ている。町内会のやつで小学生が対象なんだけどね、参加人数があまりにも少ないので誰でも参加可なんだよ。


 お陰で夏休みだろうと規則正しい生活ができているのだらいいんだけど。



 今まで気にしていなかったけど瀬長たちって処分はどうなったんだろうな。裁判所の調査には協力したけど判決までは聞いていなかった。

 よくわからないことだけど、初犯らしいし保護観察ぐらいで済んでいるような気がする。街中で不意に出会うとかはないよな? 保護観察中なら余計なことはしてこないと思うけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る