第64話
家に帰ると『遅い!』と母さんが怒ってきたけど、『女の子とデートだった』と嘘ではないが本当とも違う言い訳をしたら許された。今度その子(和泉)を家に連れてくるように、まで言われた。
今度機会があったなら連れてきてもいいとは思っている。二周目では何度か連れてきていたし15歳のキッズではなく中身40近いおっさんなので今さらって感じとなり無問題、だと思う――たぶん。
ネットで色々と調べてみる。もちろん瑞希が飽きるまでスマホゲームをやらせたあとでの話だけど。
「あのアパートの二階の一部屋は空室で入居者募集中っと。お家賃57000円駐車場付き」
相場と変わらない。特段あのアパートが特別ななにかってわけではなさそう。他の入居者についてはわからないけど、停まっていた車とか見てもごく普通の人が住んでいる感じがしていた。
「じゃあ、あの紫のライトはどうだろう?」
検索サイトに紫ライトとまでインプットするとサジェストに【紫ライト 大麻】【紫ライト 植物育成】【紫ライト 犯罪】などが出てきた。
「そうか。そういうのが……。ちょっと和泉に聞いてみよう」
『今大丈夫?』
『へーき』
メッセージを送るとものの数秒で返信があった。
『津鬼崎って大麻とかやっていた?』
『うん! やっていたっていうのもあるし、売りさばいていたみたいだよね。わたしたちもお溢れもらっていたしね、はっぱ』
『え? 和泉も大麻を吸っていたの?』
『うん、一周目では吸っていたね。頭がクラクラして気持ちいいんだよね。もう二度とゴメンだけど』
また吸いたいとか言われなくてホッとした。
『りょーかい。なんとなく掴めた気がする』
『津鬼崎?』
『ああ、もしかしたら津鬼崎とか排除できるかもしれないよ』
『まじ? すごっ! 誠志郎くんすごいね』
あとはタイミング次第になるんだよな。千載一遇のチャンスかもしれないからよく見極めないとならない。
大麻を栽培しているとなると最低限世話をしに302号室に来ることは絶対だろう。和泉の話だとあの進入禁止部屋に入れるのは津鬼崎一人だけのようだし。
ここに関係のない第三者とかいなかったのは大助かりだった。津鬼崎が立ち寄らないのであれば僕の計画はなんの役にも立たないからね。
僕の立てた計画は至って単純。なんの捻りもないし、アイデアだって無いに等しい。
津鬼崎が大麻草の世話なり収穫なりをしに来ているときに警察に電話をかけて、彼らに現行犯で津鬼崎を逮捕してもらうってだけ。
津鬼崎が未成年だと逮捕の後が弱いので、やつが18歳になった後に計画を実行するつもり。都合がいいことに津鬼崎の誕生日は4月の上旬らしい。
それまでは様子を伺いながらも深追いはしないつもりだ。
「じゃぁ、手を出せなかった半グレの壊滅もありうるってこと?」
「それは警察の活躍如何にかかっているんじゃないかな。津鬼崎から辿っていってそっちまで行けるかどうかは僕にもわからないよ」
「なーんだ。でも、津鬼崎の線が消えれば茜たちのほうも無事になりそうなんだよね?」
「まあ、半グレとは関わり合いが無くなるけどね。ただ勉強しなくて彼女らが落ちこぼれるのはまた別の話だからね」
勉強ができない・しないっていうのは彼女らの資質の問題だからそればかりは遠藤たちの努力次第となってしまう。
この先の見通しがついたと言ってもまだまだ絵に描いた餅。机上の空論でしかない。ここに肉付けをしていって完全な計画にしていかなければならない。
ただできることは限られているし、下手打って相手にこちらの動きを知られてしまっては元も子もない。
あくまでも無関係を装いながらあの部屋と津鬼崎の行動を監視するしかないと思う。
前回や前々回と違いこちらの素性が向こうに漏れる心配がないだけアドバンテージだとは思えるんだけど。
「ただ見ているだけ、っていうのは歯がゆいよなぁ」
「そこはしょうがなくない? だってわたしら高校入学前の中途半端な時期だし、たとえ高校に入学した後でも所詮はコドモだよ? できることって限られるじゃない」
「そうだな。その中で最大の果実を得られればいいってだけだもんな。失敗して元々。成功したら万々歳って思っていればいいよね」
「そーゆーことだよ。じゃぁ、明日もデートを楽しもうね?」
デートってほぼ毎日会っているのに……。
こちらの世界線に戻ってきてからのスケジュールはこんな感じ。
まず花楓の家の前の公園に集合。花楓が出てくれば後をつけてだいたい図書館に移動。出てこなければずっと公園でダベるだけ。図書館から花楓が帰った後は津鬼崎のアジトの観察。
三周目は10日が過ぎたけど内7日はこのスケジュールなんだよね。
花楓のこと付け回さなくて良くない? 津鬼崎のアジトだけ見張っていれば良くない? つっか二人で行動しなくてもいいんじゃないかな。まぁ、一緒に入られるのは嬉しいんだけど。
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