第27話
「母さん、水着買いたいのでお金もらえませんか?」
「水着? あれ、せーくんは水着ってプールとか海で使うものって知っているわよね?」
「それは流石に知っているよ。当たり前じゃないかな?」
「じゃあなんでせーくんは水着が必要なのかしら?」
僕は母さんに何を疑問に思われているのだろう……。
「プールや海に行く予定が夏休み中にあるんで、買わないといけないんだよ」
「えっ⁉ せーくんがプールに………。だ、誰と行くのかしら?」
「友だちと後輩だよ。水着も一緒に買いに行くからお金が必要なんだけど……駄目かな?」
遊びの道具を買うのにお金をせびるのは駄目だった感じかな? せめて前借りとか出来ないかな。
「まぁまぁせーくんがお友だちと遊びに行く日が来るなんて! お母さん嬉しいわ。お金はいくら必要なの? 幾らでもあげるわよっ」
「いや……幾らぐらいなのか行ってみないと分からないけど、そんなに高いものは買わないから5千円くらいでいいと思うよ」
水着なんて中学の頃の学校指定水着しか買ったことないから値段なんてわからない。ネットで見ても良し悪しがわからないので今ひとつピンとこなかった。
「はい、じゃ奮発して壱萬円ね」
「ありがとう。大事に使わせてもらいます。今度バイトを始めるから今後はこういうことは減ると思うけど、なにかあったらまたよろしくね」
今日の帰りがけに野添くんのバイト先に面接に行ったんだ。本当に人手不足みたいで、すぐに採用された。夏休み入った後の週明けからバイトが始まることになった。
母さんにもさっき保護者の承諾書を書いてもらったばかり。
「ねえお兄ちゃん。ちょっといい?」
「なんだい、瑞希」
「その友だちと後輩さんって女の子だよね?」
「えっ⁉ へっ、ど、どうしてそう思うんだい?」
突然の瑞希のツッコミにどもったし、ちょっとキョドった受け答えになってしまう。
「まぁ~せーくんの彼女!」
「違うっ、和泉は彼女じゃないって!」
「ああ、友だちって和泉ちゃんなのね。では後輩さんは花楓さんね」
和泉は確か両親とも会っていたよな、僕が入院していたとき。花楓も瑞希とは一緒にいたけど母さんとも会っていたか。
「あらら、両手に華ね。せーくんはいつからはーれむやろうになったのかしら?」
母さんの口からハーレム野郎という言葉を聞く日が来るとは思ってもみなかったよ。確かに二人とも可愛らしい花には違いはないけれどさ。
「ウチも行くっ!」
「え? 瑞希?」
「ウチも水着買いに行く! プールもお兄ちゃんと行く!」
ははーん。僕がプールに行くと知ったら自分も行きたくなったんだな。お子様だからな。仕方ない。
「じゃあ別の日に瑞希ともプールに行こうな」
「チガーう‼ みんなと一緒のときに私も行く。お兄ちゃんが襲われないようにしっかりとこの瑞希ちゃんが見張っていてあげる」
は? 今なんて言った⁉ 僕が襲われるって誰にさ。
「高校生の中に小学生は入れないかな?」
「そんなこと言ってお兄ちゃんはあのお姉ちゃんたちとイチャイチャしたいだけなんでしょ? そんなの妹のウチが許さないからね!」
いつもは目に入れても痛くないほどかわいい瑞希だけど、今の発言はどうにもこうにも意味不明。
どこから僕が和泉や花楓とイチャイチャする要素が出てくるのだろうか。彼女たちは僕のことを男性として見ていないと思うけどな。
「一応二人には聞いてみるけど、断られたらちゃんと諦めるんだぞ」
「ん~ものすごく不満だけど、拒否られたらどうにも出来ないからそこは諦めて、ウチ単騎で出撃するからいいよ」
駄目だろ? 小学生が水着売り場やプールに一人で行っちゃ危ないと思いますが。水着売っている店もプールも近所ではないんだから。
「返事が帰ってきたぞ。ん……いちおう買い物はオッケーらしいけど。夏休みに入ってすぐは彼女らのバイトの面接があるから、終業式の後なら大丈夫だと。どうする瑞希」
「ん、大丈夫。電車でお兄ちゃんの高校のある駅まで行けばいいよね」
「電車に一人で乗れるのか?」
「バカにしないでよ。電車くらい一人で乗れますぅー」
小学生と言っても高学年だし、さすがに電車くらい乗れるか。
「わかった。昼前には学校から出られるだろうから改札の前で待っているよ。気をつけてこいよ」
「じゃ、お昼ごはんと瑞希ちゃんの水着代に追加でお金あげないとね。お兄ちゃんに預けておくわね」
「ありがとーお母さん! お兄ちゃん、よろしくねっ」
なんだかよく分からない状況になったけど、和泉たちと瑞希は面識がないわけじゃないし余計な気を遣うこともなくて大丈夫なんだろう。
プールにも瑞希を連れて行くかはその時に話せばいいだろう。どうせあの二人のことだから瑞希が付いてきてもOKっていいそうだよな。
なんだかんだでこの二周目は一周目のときにはありえなかったリア充感がふつふつと湧いてくるね。
瑞希も一応は女の子だし、これじゃ本当に母さんの言う通りのはーれむやろうになっちゃいそう。
※
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