第25話
部活動もないので寄り道もせず直帰した。直帰とかの思考があるのはやはりブラック社畜だったせいだろうか。直帰なんてさせてもらったことないけど……。
さて、自宅に帰ったが瑞希は遊びに行っているようで不在だった。母さんもパートが終わっていないのでまだ帰ってこない。
久しぶりに一人きりの時間なのだが、ずっと騒がしかったせいで自由な時間を持て余す。もう何年も自由な時間というものがなかったので余計だったりする。
制服を脱いで、適当に学習椅子の背もたれに引っ掛けとく。ズボンも脱いで中学の時のジャージに履き替える。もう卒業して1年ちょいだけどこの中学ジャージには重宝している。スーパーださださだけどね。
ベッドに寝転がり思考の海に沈んでみる。
タイムリープした日から一月ちょっと過ぎた。今のところ怖いくらいに順調だ。
鈴木らに殴られ蹴られ入院したのは予定外だけど、あの程度のことはちょっとしたイレギュラーとでも思っていて差し支えないだろう。
ブラック企業の精神にも身体にもクる無差別攻撃に比べれば可愛いものとしか言いようがないもんね。
事件のことは腫れ物に触るように聞かれたのがやや不愉快だったと和泉は話していたけど、それよりも若干誇張気味に僕のことを話したほうが問題じゃないかな?
和泉は『僕に助けられた』と教室内で語ったらしいが、まるで英雄譚のように話したらしい。ほんと止めて! 僕はただタコ殴りされただけなんだからね。
ただこのことで少しだけみんなの僕に対する見方が変わったのは感じている。気軽に話しかけてくることは未だにないけれど、こちらから話せば野添くんのようにふつうに話しをしてくれるようになった。
これはだいぶ進歩したんじゃないかと思う。陰キャ脱出、ブラック企業バイバイ! 目標達成まで着々と進んでいる気がする。
一方の和泉なんだけど、こちらも変わっているような気がする。
まず和泉はテストが終わったばかりにも関わらず、毎日少しだけらしいが勉強を続けているそうだ。飛び降りる前に言っていた、流されるだけの駄目な方向からは真逆に進み始めていると思う。
彼女があのときに言った、流されるの言葉は誰にどういう風になのかはわからない。だけど、現状彼女を低みに流していきそうなものは見当たらない。その元凶っぽかったあの4人は消えたし。
イチ被害者として小耳に挟んだ情報だけど、どうも和泉を含めた5人の間ではいわゆる痴情のもつれ的なモノがあったらしい。
遠藤は鈴木に嶋村は瀬長に思いを寄せるが、男二人はツルペタなこの女二人には興味はもたず、エロ目線で和泉のことを見ていたらしい。面白くない女二人は陰で和泉のことを悪しく思っていたようだ。
じゃあなんで、捕まる直前にレイプまがいなこと男二人がしているのを止めなかったのかはよくわからん。自分の好きな男が他の女に手を出していいのかってね。たぶん憎さのほうが上回ったのかもしれないね。僕の知ったこっちゃないけれど。
もう一つ気がかりなのはこの4人にも影響を与えたという皿元の彼氏の大輝ってやつの知り合い。和泉に聞く分にはだいぶ悪い奴ららしい。
『奴ら』というように一人ではなく、集団。人数ははっきりしないけど、二人三人ではなく数十人は組織としているみたいなこと言っていた。いわゆる半グレ集団ってやつだな。
適法での風俗店経営や地下アイドルのマネジメントみたいな表の顔もある一方、売春、ヤミ金融、窃盗、強盗、恐喝、暴力、薬物、詐欺など完全な違法行為にもガッツリ手を染めているという。
こいつらには絶対に関わっちゃいけない。こういうのは公安当局が対処に当たるもんだし、個人でどうにかできるもんじゃない。
だから和泉は拒んだわけなんだけどね。正解。拒んで正解。よくもまあ無接触のまま距離を空けられたものだよね。運が良かったんだね。
僕が大輝の知り合い云々を聞いたのがタイムリープしたその日の放課後だから、あれが一つの分水嶺だったのかもしれない。
バタフライエフェクト様々ってことでいいのだろうか? なんか都合が良すぎる気もしなくもないけれど。
どっちにしても和泉は安全安心な状況だし、僕らは友だちになれたし、二人とも学校に居場所を見つけられたようだしオールグリーンな感じ。最高だね。
「ああ、夏休みの部活動日程も決めないとだっけなぁ」
明後日までに夏休み中の活動予定を顧問の先生に出さないといけない。一周目のときは一切合切無関係を貫いたから放っておいたけど、今回は花楓もいるしね。ちゃんとしておこう。
秋にある文化祭用にせめて書評ぐらいはひとつふたつ書いておきたいところ。まったくの無ではまだ卒業していない3年の先輩方にシメられそうだしね。
「そういうのは明日、花楓と一緒に決めればいいよな。あとで考えておくようにメッセージ送っておこうっと」
夏休みまであと3日。今回の夏休みは何しようかなぁ。前回は完全に引きこもりだったから、その真反対を目指そう。
野添くんのところでバイトもいいな。和泉や花楓と遊ぶのもアリかもしれない。僕なんかとはたして遊んでくれるかは心配だけど。
※
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