第6章 古の化け物達との邂逅

第62話

いつも通り特に何事もなく家へと戻り、オートマトンの設定を行っていたら朝になっていた。


このオートマトンは、結構手間はかかるが、本当にすごいアイテムだ。

具体的になにができるのかと言えば、私の身代わりにダンジョン探索を行うことが出来る。

『代わり』ではなく『身代わり』というのがポイントで、私がこのオートマトンを操作して、ダンジョンを探索するのだ。

まぁ、移動はプリセットが登録されていたのだが、武器の持ち方や使い方を登録しておかなければ、ダンジョンをお散歩することしかできなかったのだが……。


朝まで頑張った結果、とりあえずハンドガンを使用するための動作登録だけは、終わらせることが出来た。

今後は部屋で椅子に座りながら、ゲーム感覚でダンジョンを探索することが出来るはずだ。

まぁ、そのためにはもっと沢山の動作登録をする必要があるけれど……それだけの価値はあるだろう。


「問題は、銃だとエネルギーの消費が激しいんだよな〜……。 たぶん私がオートマトンに込めた魔力を使って魔法銃を撃ってるからだと思うけど、これだと探索途中でエネルギー切れになるだろうね。 アイテム名にLv1って書いてあるから、レベルをあげれば貯蔵できるエネルギー量も増えると思うけど、レベルはどうすれば上がるのかな……? モンスターを倒すとか? モンスターがリポップするのは来月だけど……。 もういっそ、銃はしばらく諦めて、近接武器を持たせちゃう?」


新しいおもちゃを手に入れてウキウキしている子供みたいだと自覚しているが、このおもちゃを上手く活用すれば、命のリスクを負わずにお金を稼げるかもしれないのだから、むしろ本気で楽しむべきだろう。

というわけで、まずはオートマトンに着せる防具から作成することにした。




『ぼくのかんがえたさいきょうのおーとまとん』計画は順調に進んでいるが、いよいよゲームの先行体験が開始される18日となった。

正確に言うのなら、今は19日の午前1時。

『18日から(日本時間とは言っていない)』という結構あるあるな開始時刻だったのだ。

事前ダウンロードは済ませているので、さっそくゲームを起動する。


この『The Automaton Never Stops』というゲーム……個人的な略称『タンス』は、PVを見た印象として、個人技が強すぎるドゲザーをマイルドにして、協力プレイが必要にした感じのゲームだと思った。

オートマトンという妙にタイムリーな単語が気になってしまったし、PVを見たときに、キャラクターの見た目が最近入手したオートマトンとそっくりで、ちょっと背筋に寒気を感じたりはしたけれど、内容自体は結構面白そうで期待できるゲームだ。


とりあえず設定をドゲザーと同じ画質やマウス感度に変更し、録画されていることを確認してから、さっそくマッチングを開始した。


「お、マッチングした。 5対5でペイロードの防衛か……ルールは分かるけど、マップ理解度が低いと防衛は難しいような……むしろ攻め側の方が難しいか? まぁ、宣伝のためにも楽しく遊べばいいや」


というわけでまずは、使用する武器と移動スキル、そしてドゲザーにはなかったロールスキルを選択する。

武器はリスト一番上の初期装備で、移動スキルもリスト一番上のブースター加速、ロールスキルもリストの一番上にあった自己回復を選んだ。

解説動画を作るつもりなので、上から順に使っていくのが一番分かりやすいだろう。


「よろしくお願いしま~す」


聞いたことのある特徴的な声が聞こえた。

これ、声的にも名前的にも、ほぼ間違いなく元プロゲーマーのストリーマーさんじゃないだろうか?


「お願いしま~す」


また別の女性の声が聞こえた。

……この声は知らない。

だがきっと、私よりも有名な方だろう。


「よろしくお願いします」


とりあえず私もゲーム内VCで挨拶をしておく。

招待された人のみが参加できる先行体験なので、頭のおかしい人はいないだろうし、むしろ積極的に挨拶をして、仲良く楽しむべきだと考えたのだ。


「え、チガイネさんってもしかして、ドゲザのチガイネさんですか?」


ドゲザのチガイネ……まるで土下座するプロみたいだ。


「え〜っと、はい、チガイネです。 ドゲザー以外は下手ですけど、よろしくお願いします」


「マジすか! 最近チガイネさんのキャラコン動画見たんですよ。 めっちゃ参考になりました。 普通にヤバかったっす」


「あ、私もそれ見ました! めちゃくちゃ簡単そうにやってましたけど、実際やってみると移動速すぎて操作追い付かないですよね!」


……分かる。

動画でも言ったけど、スキルとキャラコンを組み合わせて使うと、移動速度が速くなり過ぎるから、私も最初は何度も壁に激突した。

でもその移動速度に慣れはじめると、異次元の楽しさに脳汁が溢れ出るようになるので、是非練習して上手くなって貰いたい。


コミュニケーションのおかげか、和気藹々とした雰囲気のまま、試合が始まった。

敵の出て来そうな通路にエイムを置いていると、いい感じに敵が2人出てきたので、少し削られながらも頭に結構弾を当ててキルを取る。

キルタイムはドゲザーよりも少し長めみたいだ。


それにしてもこの武器……ドゲザーに同じ見た目と名前の武器があるのだが、リコイルまで全く同じだったので少し笑ってしまった。

他の武器もドゲザーと同じ性能の物が沢山ありそうだ。

これはドゲザー経験者に結構有利なゲームなのかもしれない。


「ここ、ここ削った! もう1人こっち来てる! ごめんヘルプ入って!」


元プロさんがピンチみたいなので急いで加勢し、スライディングをしながら削った報告の1人を倒し、もう1人も後ろから撃って倒した。

元プロさんはHP半分以下だが無事だ。

とりあえず射線に気を付けながら自己回復のスキルを使う。


「裏1人来てる! ごめんやられた!」


女性の報告で振り返ると、ちょうどその敵が出てきたので、弾を避けながら普通に倒す。

VCを使っていない2人はいつの間にか死んでいたので、最初の当たり合いで生き残ったのは、私と元プロさんだけだった。

敵の方が先に戦線復帰できるはずなので、しばらく2人で凌がなければならない。


「チガイネさんめっちゃキルタイム速いっすね。 やっぱドゲザーに比べたら当てやすい感じです?」


「いや、スキルなしで普通に動く速度はあまり変わらない感じなんで、当てやすさも同じじゃないですかね? ただ、移動スキルが1つしかないんで、結構撃ち合いに集中できる感じです」


そんな話をしていると、敵が復活したようで第2ウェーブが始まった。

先程よりも明らかにキャラコンを意識しながら撃ってきている感じだが、来るまでに移動スキルを使っちゃっているのか、普通の状態で左右に動きながら撃っているだけだ。

こちらは移動スキルを使って弾を避けながら敵を撃つことで、無傷のまま敵を倒すことが出来た。

元プロさんの援護もあったので、先程よりもだいぶ楽な感じだ。


今度は敵3人が移動スキルを使いながら一気に来た。

こっちのブースター加速はクールタイム中なので、遮蔽を使ったり普通のキャラコンで弾を避けながら時間を稼ぐ。

めちゃくちゃ私が狙われているので元プロさんは下がっているのだが、他の味方さんはまだ戻ってこないのだろうか?


とりあえず敵の移動スキルが切れるの待ってから、1人を普通に撃ち倒し、撃たれながらも回復スキルを使って時間を稼ぎ、クールタイムが終わったブースター加速を使いながらのキャラコンで弾を避けてから、相手がリロードしたタイミングで反撃したところ、ギリギリの体力で撃ち勝つことができた。

元プロさんが1人倒してくれなければ、流石に今のは死んでいただろう。


「マジナイス。 今の死なないとか強過ぎでしょ。 相手絶望しちゃうよ~?」


元プロ、声がめちゃくちゃ楽しそうである。


「いや、ホント助かりました。 ドゲザーと違って、1人じゃ今の3人は無理でしたね。 マジでスキルクールタイム中の反撃が難しいです。 スキルある時は個人技でちょっかいかけてもいいと思いますけど、基本固まってフォーカスしたほうが強い感じですね」


「それはそう。 でも前で引き付けてくれると、後ろはめっちゃ助かってる」


元プロゲーマーの方にそう言って貰えると、結構嬉しい。

別ゲーではタンク的な役割はめちゃくちゃ苦手なのだが、このゲームならヘイトを集める避けタンクとして、味方の役に立てそうな気がしてきた。

ドゲザーと同じキャラコンが結構使えるみたいだし、結構本気でこのゲームをやり込んでみようかな?


そんなことを思いながら、第3ウェーブへと入るのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る